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お客様と打ち合わせをしていると、「なかなか月次が締められない」や「月初は忙しいから打合せの時間が取れない」といった話をよく耳にします。
会社の毎月の1大イベントとなっている月次決算処理ですが、なぜ早期化が求められ、なぜ早期化を実現できないのでしょうか?
今回はその原因と解決方法を考えてみたいと思います。
そもそも、月次決算とは何のために行うのでしょうか?
通常、会社は年に1回(あるいは半年や四半期に1回)決算を行い、経営成績や財政状態を会社外部の利害関係者(株主、債権者など)に向けて明らかにすることが法律で義務付けられています。
これに対し、月次決算には法的な義務はありません。法的な義務がない処理を毎月苦労して行う目的としては2つ挙げられます。
1つは、年次決算(半期、四半期決算)の準備です。毎月、会計帳簿が締め切られることで、処理の誤りを早期発見することができ、年次決算の作業負荷を軽減することができます。
もう1つは、経営者が毎月の利益の状況・財政状態を把握することにより、事業戦略を検討するためです。
この2つの目的を達成するためには、月次決算に「正確性」と「スピード」が求められることが分かります。
特に、後者の目的については、収益が悪化しているのにその状態が翌月末に初めて把握できる、という状態では状況の建て直しが難しくなってしまいます。そのため月次決算は「スピード」が重要視されるのです。会社の規模にも依りますが、月次決算は翌月第5営業日までに出来ることが理想と言われます。
では、月次決算の目的が分かったところで、月次決算の流れに沿って処理を遅らせる原因について考えてみましょう。
営業担当者による売上計上、購買担当者による仕入計上、経理担当者による売掛金の回収・買掛金の支払、その他交通費などの経費の精算など、その月のお金の出入りを締め切ります。
月次決算は経理担当者が主体となりますが、月中の取引の締切には他部門の協力が欠かせません。会社によって「毎月第○営業日までに精算書を提出する」などの決まりがあると思いますが、この決まりが守られないことにより、会社全体の月次処理の期間が延びてしまいます。
購買担当者や製造担当者により実地棚卸が行われ(※)在庫金額を確定したり、製造業の場合は間接費の配賦などを行い、製造原価を確定します。
また、経理担当者による減価償却費や各種引当金(貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金など)の計上が行われます。
(※)実地棚卸を行うスパンは会社により異なります。
月締め後に、経理担当者により会計データが集計され、試算表が作成されます。
また、経営者への月次業務報告書(部門別損益計算書や予算実績対比表など)が作成されます。
皆さんの会社でボトルネックとなっている作業は①~③のどの処理でしょうか?
私が今までシステム導入で関わったお客様では、「①月中の取引の締切」に時間がかかる場合が多いように感じます。
得意先や仕入先とも関わってくる作業であるため、「仕入先からの請求書が届かない」のように自社だけでは対応が難しい原因もあります。
では、自社内で月次決算を早期化するためのコツには何があるのでしょうか。
システムを使って作業を自動化すると、ヒューマンエラーの回避や作業自体のスピードアップが期待できます。以下に月次決算で役立てられそうなシステムの機能をまとめました。
ERP(統合基幹業務システム)に備えられている機能です。
例えば、営業担当者が売上伝票を入力すると、その伝票内容を元に仕訳が自動作成されます。
会計システムと販売システムや人事給与システム、固定資産システムなど複数のシステムを使用されている場合、会計システム以外で発生する仕訳を取り込む機能です。
入力作業を1回とすることで、入力間違いや2重入力の労力を削減します。
銀行から入金データをダウンロードし、そのデータをシステムに取り込む機能です。
入力作業を無くすことで、入力間違いや入力漏れを防ぎます。
銀行への振込依頼データを作成します。
仕入先への支払や、社員に対する経費をキャッシュレスで支払うために活用できます。
家賃や機器利用料、保守料など、毎月一定の金額で請求・支払する場合に伝票を自動作成する機能です。
毎月同じ伝票を入力する作業を削減できます。
受注時や発注時に注文内容をシステム入力しておき、受注や発注内容に従って売上や仕入を一括計上する機能です。
1件1件の伝票登録する労力を削減したり、月末に集中する売上や仕入の伝票入力の負荷を分散することができます。
上長が外出先でもインターネットに接続できれば決裁可能となるため、月初は必ず事務所に居るという制約がなくなります。
システムによっては、スマートフォンで決裁ができる場合もあるでしょう。
一定の基準に従って、ある勘定科目の金額を部門やプロジェクトに分割(配賦)する仕組みです。
システムにより「ある勘定科目の残高金額により配賦」「一定の比率により配賦」など、使用できる配賦基準が異なります。配賦作業を自動化することで、間違いや計算の労力を削減できます。また、配賦をやり直す場合の労力も大幅に違ってくると思われます。
試算表のレイアウトで確認することができる画面・帳票です。
月次処理の中で仕訳の追加・訂正があった場合も、入力した仕訳をリアルタイムで集計し、結果を確認することができます。
データの分析者が、自由に分析の切り口を切り替えてデータの確認を行ったり、またそのデータを詳細に掘り下げて確認することができる、多角的なデータ分析を行うためのツールです。
定型のレポートとしてあらかじめフォーマットを作成しておくことも可能です。Excelで作成した報告書と比べると、分析の自由度やデータ確認の即時性について有利です。
如何でしょうか?皆さんの会社でお使いのシステムには、似たような機能がありますか?
その機能は活用できているでしょうか?
今後、このような機能を活用する、あるいはシステムを導入するとなった場合に、システムを使いこなすためのコツとして心に留めて頂きたいことは「システムに合わせて業務を変更する」ということです。
既にシステムを活用されている方にも現行の業務を振り返ってみて頂きたいのですが、システムを使用する前に比べて業務時間が増えた・業務内容が複雑になったということはないでしょうか?
その場合は、システム使用前に行っていた業務とシステムで可能な処理とのギャップを埋めるために余分な作業が発生してしまっていると考えられます。
月次決算を早期化するはずが、システム入力するために業務が複雑化・煩雑化して処理に時間がかかってしまっては本末転倒ですよね。
そこで登場するのが、「システムに合わせて業務を変更する」という考え方です。
システム(ある会社のために作られた独自のシステムを除く)は、「一般的にこのような処理の流れで業務が行われる」ということを想定して作られています。
システム導入時に現行の業務をシステム化ができない、あるいは現行のシステムを上手く活用できていないということは、そこに皆さんの会社(あるいは業界)独特の業務(処理・手順)があると考えられます。
その業務(処理・手順)は必ず必要なことなのでしょうか?少しやり方を変えることで業務手順を大幅に減らすことができるということはないでしょうか?
「システムに合わせて業務を変更する」ということは、現行の業務プロセスに拘らずに、システムで実現できない業務(処理・手順)、実現が難しい業務(処理・手順)について、今後も必要なのかどうか取捨選択を行うということです。
取捨選択を行った結果、業務の「ムダ・ムリ・ムラ」をなくし、シンプルな業務の流れを作ることができれば、月次決算の更なる早期化に繋がるのではないでしょうか。
冒頭で確認した通り、月次決算に求められているのは「正確性」と「スピード」です。
システムを使用すること自体で「正確性」「スピード」に効果が期待できますが、 もう一歩踏み込んで、システムを上手く使いこなすために、ぜひ一度業務の流れを見直す機会を作ってみては如何でしょうか?シンプルな業務手順を作ることができれば、それが月次決算の早期化の一番の早道になるのではないかと思います。
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