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2023年8月31日

インボイス制度開始に向けて、経理担当者が確認しておきたいポイント

令和5年10月1日から、インボイス制度が導入されます。
インボイス制度とは、売り手と買い手ともに正確な消費税額を把握することで、適正な申告及び納税を行うことを目的に設けられた制度です。これにより、新たに義務が生じたり、売り上げた際に受け取った消費税額から仕入れの際に支払った消費税額を差し引く際(仕入税額控除)の条件が変更になります。
制度が開始してから困らないように、ポイントを事前に確認していきましょう。

インボイス制度とインボイス

インボイス(適格請求書)

売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるために消費税額等が明記された請求書等をいいますが、現行の請求書(以下「区分記載請求書」といいます。)に一定の記載事項が追加された請求書になります。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「税率ごとに区分した消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

インボイス制度で何が変わるか

一定の事項が記載されたインボイス及び帳簿の保存など、仕入税額控除を受けるための条件が、これまでの制度から変更されます。

<売手側>売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。

<買手側>買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。

(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

インボイスの発行

インボイスを発行するには、国税庁から適格請求書発行事業者の登録を受ける必要があります。
適格請求書発行事業者には、インボイス、修正インボイス、返還インボイスの発行義務、写しの保存義務を負う必要があります。

システム上のポイント

ある程度の規模でビジネスをしている場合は、販売や調達、請求や支払、会計処理にシステムを利用することが多いのではないでしょうか。
市販のシステムをご利用であればインボイス制度に対応したシステムに入れ替えたり、自前のシステムを構築している場合であればシステム改修を施してインボイス制度に対応していることと思います。

すべてシステムで実現することができれば良いですが、発生頻度や実現するためのコストを鑑みて、システム外で対応が必要な機能がある場合は、どのような場面でシステム外の対応が必要なのか事前に確認しておくのが良いでしょう。

例えば、弊社で取り扱いのERPパッケージシステムでは次のような変更についてシステムで実現します。

  • 請求書等への記載事項追加
  • 返還インボイスへの表記事項追加
  • 税抜/税込混在時の税額計算対応
  • 買手として発行する支払明細書対応
  • 帳簿保存での控除対応
  • 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置への対応のための識別

しかし、次の内容についてはシステム対象外としています。

  • 委託販売の代理交付、任意組合等に係る事業、複数の書類による対応のインボイス発行
  • インボイスの修正、再交付の管理
  • 支払明細書の相手方の確認
  • インボイスおよび写しの保存
  • 国税庁からの登録番号取得
  • 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置による控除額算出

運用上のポイント

システム以外にも経理業務として影響を受ける点として、以下について税理士を交えて確認し、細かく調整しておくと良いでしょう。

  • 販売先、仕入先両方への調整
  • 免税事業者への対応
  • 返還の基となる取引日
  • 制度開始日をまたぐ請求書

以下それぞれ説明していきます。

販売先、仕入先両方への調整

自社と取引先のどちらが発行した請求書/支払書をインボイスとして採用するか、販売先および仕入先双方の取引先との調整が発生します。
そのため、新たに取引先が追加になる際の業務フローには、適格請求書発行事業者か否か確認する業務を増やす事になるでしょう。

免税事業者への対応

免税事業者はインボイスを発行出来ないため、基本的には免税事業者からの仕入は仕入税額控除を受けることができなくなります。
ただし、当面は経過措置として一定割合の税額控除を受けることができます。この時、免税事業者との取引や税相当額を具体的にどのように区別して処理するのか各部門と調整しておく必要があるでしょう。

返還の基となる取引日

適格返還請求書には、対価の返還等の基となる取引を行った年月日を表示する必要があるのですが、基となる取引が特定できない場合はないか、ある場合はどのような日付を表示するのが適当か検討が必要かと思います。

制度開始日をまたぐ請求書

例えば20日締請求の取引先の場合、売手は10月1日から10月20日までの取引についてはインボイスを発行する必要がありますが、9月21日から9月30日までの取引については、現行の請求書の発行が認められています。
そのため、請求書を2つに分ける、請求書の記載を区別できるようにする、9月分も合わせて1つのインボイスで発行するなどの対応が考えられます。

以上が、インボイス制度開始に向けて確認しておきたいポイントです。
インボイス制度は、自社や取引先の消費税の節税にも関わる制度となります。制度が始まってから慌てることがないように、今回取り上げた、ご利用のシステムでどこまで処理できるか、処理できない要件はどのように対処すべきか、また事前に取引先や税理士、社内各部と調整が必要なことは押さえられているかなど、もし気になるポイントがありましたら、今一度確認して事前に手を打って頂ければと思います。

参考

政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202210/1.html

国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm

臨床検査部門システムの検査機器接続チームを経て、現在はERPパッケージ「GRANDIT」の導入・稼働支援に従事。長年の自由気ままな一人暮らしの後、訪れた新婚生活に窮屈さを感じつつも、日々奥さんに感謝している。
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