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メタバースをビジネスに最大活用!インダストリアルメタバースの可能性

  • IT用語解説

メタバースは従来、ゲームなどのエンターテインメント分野を中心に活用されてきましたが、ビジネスツールとしても広大な可能性が広がっています。

その一例として挙げられるのが、製造業の製品開発や予知保全などで活用が期待される「インダストリアルメタバース」です。

本記事では、インダストリアルメタバースとは何か、その特徴やメリットについて詳しく解説します。

インダストリアルメタバースとは

インダストリアルメタバースは、現実の工業環境や業務プロセスを仮想空間に再現することを指し、より広範な相互作用やコラボレーションを実現する仮想世界です。

簡単に言うと、特定の産業やビジネスのニーズに特化したメタバースです。メタバースは一般消費者向けに設計されているのに対し、インダストリアルメタバースは産業界の専門家や企業向けです。

仮想現実や拡張現実を活用して、実際の工業環境やプロセスをデジタル化し、遠隔作業、トレーニング、生産管理、設計協力などの産業活動をサポートします。

インダストリアルメタバースは業務の効率化や生産性の向上、コスト削減などの実業務的な目標を達成するための機能を提供します。

デジタルツインとの違い

インダストリアルメタバースとデジタルツインは、ともにデジタル技術を活用して現実世界のプロセスやシステム、環境を仮想空間で シミュレートする概念ですが、その焦点と応用が異なります。

焦点の違い

デジタルツインは「具体的な物体やシステムの精密な複製」と「監視」に焦点を当てています。

インダストリアルメタバースは広範な業務プロセスや活動を仮想空間で再現し、その中での「インタラクション」に重点を置いています。

応用の違い

メタバースは「ユーザー間のインタラクション」が核となるのに対し、デジタルツインは主に「システムやプロセスの性能を模倣し分析すること」に重きを置かれます。

つまり、訓練や遠隔作業などの作業を複数のユーザーが同時に協力したり、情報を共有したりすることが可能なのがインダストリアルメタバースで、実物の物体やシステムをデジタルで完全に複製し再現した仮想空間上で、性能の監視や分析を行うのがデジタルツインです。

インダストリアルメタバースのメリット

高精度の検討による品質の向上

インダストリアルメタバースの導入をすることで、仮想空間上で製品のデザインや機能を目視しながらの検討が可能となります。

これによって、サイズ感なども実感しやすくなり、実物を使った場合に近い高精度な検討が行えるため、品質の向上が期待できます。

また、検討した結果を迅速に現物へ反映しやすくなるので、製品の改善サイクルを高速化できます。

製造過程におけるコストダウン

伝統的な製造プロセスでは、新しい製品を試作する際には多数のプロトタイプの作成が必要で、これには大きなコストと時間がかかっていました。

しかし、インダストリアルメタバースを導入すれば、メタバース空間内で試作品をデジタル上で再現することが可能になります。

これによって、プロトタイプの制作や生産ラインの試運転にかかる時間やコストを大幅に削減可能です。

結果として、製造コスト全体の削減につながります。

トラブルの回避

トラブルの未然防止と迅速な解決が可能になることも大きなメリットです。

仮想空間では、過去、現在、未来の動作状態を一元的に把握できます。これによって、物理的に離れた拠点や機器のトラブル原因を特定し、速やかに解決策を取り入れることが可能です。

さらに、メタバース空間は複数の拠点で同時的かつリアルタイムに共有できるので、例えば遠隔地にいるエキスパートから、まるでその場に居合わせているかのようにリアルタイムでのアドバイスや支援を受けることもできます。

そのため、インダストリアルメタバースは予知保全やトラブル対応だけでなく、訓練にも有効です。

プロモーション力・マーケティング力の向上

インダストリアルメタバースの技術を活用することで、マーケティングやプロモーション活動も革新的に進化します。

例えば、仮想空間内での疑似体験型ショールームを構築することで、商品やサービスの特徴を顧客へ直感的に伝えることが可能になります。

これは、特に遠方の顧客や新しい市場の潜在的な顧客に対して、実際の製品やサービスを体験してもらうことが難しい場合に非常に有効です。このような新しいアプローチはブランドのイメージや価値を高めることにも貢献し、力なブランディングツールとしての役割も果たします。

インダストリアルメタバースの今後

インダストリアルメタバースは産業分野での活用が拡大しており、将来性にかなりの期待が寄せられています。

仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といったXR*、人工知能(AI)、ビッグデータなどの分野での技術進歩がインダストリアルメタバースの将来に重要な役割を果たします。

これらの技術が発展するにつれて、よりリアルでインタラクティブな仮想世界が実現し、産業用途での活用が拡大すると見られています。

リモートワークについてもインダストリアルメタバースの重要性を高めており、製造業やエネルギー業界、建設業界などでの導入が進んでいます。

また、訓練と教育の分野では、インダストリアルメタバースが提供する仮想世界でのリアルなシミュレーションが、効果的かつ安全なトレーニング手段として注目されています。さらに、持続可能な製造プロセスの促進や、物理的なリソース消費の削減にも貢献することが期待されています。

*XRについてはこちらの「VR ? AR ? XRをどれだけ知っていますか?」をご覧ください。

さいごに

今回は、インダストリアルメタバースについてご紹介いたしました。

インダストリアルメタバースは、製造業をはじめとする多くの産業分野において、革新をもたらす技術として注目されています。

仮想空間上でのリアルなシミュレーションや遠隔作業、プロセスの最適化を実現することで、効率化やコスト削減が期待できるだけでなく、品質向上やトラブルの迅速な対応など、実務における多くのメリットを得ることができます。

これからの産業界において、インダストリアルメタバースが果たす役割はますます大きくなっていくでしょう。

企業は、この新しい仮想世界を活用することで、競争力を高め、持続可能な成長を実現するための一歩を踏み出すことが求められています。

未来のビジネスにおける新しい可能性を開くために、インダストリアルメタバースへの理解と導入を進めていきませんか?強