ERPの導入に向けた課題解決やビジネスに役立つ情報をブログで発信しています。
企業の中核を担うERP(Enterprise Resource Planning)システム。各事業部の要望に応え、データ抽出や帳票作成、システムメンテナンスなどに日々奔走している情シス担当者にとって、ERP運用業務の効率化は永遠のテーマではないでしょうか。
近年、AI技術、とりわけ生成AI(Generative AI)が進化し、これまで「人にしかできない」と思われてきた業務にも、その活用が期待されています。本記事では、「自社ではまだ導入できていないけれど、世間ではこういうアプローチが始まっている」という情報共有を目的に、代表的な事例を紹介します。
ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の基幹業務を一元管理するシステムです。しかし、その複雑さゆえに、以下のような課題も抱えています。
これらの課題に対し、世間では以下のようなアプローチを試みています。
MicrosoftのCopilotやSAP Jouleなどでは、ユーザーが自然言語で質問するだけで、ERPマニュアルから該当箇所を瞬時に抽出、回答する仕組みを提供しています。※1
また、GPT-4モデルをカスタマイズした社内チャットボットに、独自のERPマニュアルやQAを学習させたことで、一次問い合わせの工程を自動化したという話もあります。※2
ユーザーからの定型的な質問に生成AIが24時間365日対応することで、情シス担当者の問い合わせ対応工数を大幅に削減できます。
定型的な業務プロセスを自動化することで、担当者の負担を軽減し、人的ミスのリスクを低減します。例えば、「来週までに○○会社の注文書レポートを、このPDFから登録して」と指示するだけで、生成AIがPDFの内容を読み取り、データに変換してERPの適切な項目に自動入力する、といった活用が研究されています。※3
これまで専門的な操作知識が必要だったERPの操作を、日常会話のような言葉で実行可能にし、ERP利用のハードルを下げることが期待されます。
それでは、生成AIがどのようにERP業務を効率化するのか、代表的な事例を見ていきましょう。
これまで、営業部門から「特定の製品の売上推移を知りたい」「特定の年齢層の購買傾向を分析したい」といった依頼があった場合、情シス担当者はSQLクエリを記述し、必要なデータをERPシステムから抽出していました。しかし、SQLの知識があまりない担当者にとっては、この作業は大きな負担です。
生成AIを活用することで、営業担当者が自然言語で「先月の〇〇製品の売上推移を教えて」「主要年齢層の購買傾向を分析して」と指示するだけで、必要なデータが自動的に抽出され、グラフや表形式でレポートが作成されます。※4
ERPシステムにエラーが発生した場合、情シス担当者はエラーログを解析し、原因を特定する必要があります。しかし、エラーログは専門用語が多く、解析には高度な知識が必要です。
生成AIを活用することで、エラーログの内容を自然言語で解説したり、過去のエラー事例との類似性を分析したりすることで、エラーの原因特定をサポートします。また、解決策を提示したり、関連するドキュメントを自動的に検索したりすることも可能です。※5
生成AIの導入には、以下のような注意点も存在します。
このため、現時点では「AIが入力情報に応じて自動で作業し、人が最終チェック・運用判断を行う」ステップ的な導入が現実的です。日々のタスクを少しずつAIに任せ、ナレッジを蓄積しながら徐々に業務範囲を拡張していくアプローチが、結果として持続的な効率化をもたらします。
生成AIは、ERP業務の効率化に大きな可能性を秘めています。データ抽出・分析の自動化、業務プロセスの効率化、システム運用のサポートなど、さまざまな領域で業務を改善し、情シス担当者の負担を軽減することができます。
今回のブログで紹介した事例を参考に、ぜひ生成AIの導入を検討してみてください。
このブログが、皆さんのERP業務効率化の一助となれば幸いです。
※1:SAPのJouleについて
※2:AIで自動化するコールセンターシステム
※3:AIによるPDFからの自動抽出方法
※4:生成AIで変わるデータ分析の未来
※5:生成AIで変わるトラブルシューティング