物流業界は、近年の技術革新に伴い、ますます高度化しています。
特にIT技術の導入は、サプライチェーンの最適化や効率性向上において重要な役割を果たしています。
本記事では、物流業界における基本的なIT用語とその活用方法について解説し、これからのトレンドとなる技術についてご紹介します。
SCMとは「Supply Chain Management(サプライ・チェーン・マネジメント)」の略で、仕入れから販売までの業務を管理・最適化することで、サプライチェーン「全体」の業務を最適化することを目的としています。
SCMを物流現場に導入することで、調達コストの削減やリードタイムの短縮、環境に配慮した調達の実現など様々なメリットが得られます。
ERPとは、「Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)」の略で、日本語では「企業資源計画」と訳されます。
よく基幹システムと混同されますが、基幹システムは、「生産管理」「販売管理」「在庫管理」など、それぞれが独立して使われている業務システムのことです。
ERPは、システムごとに独立しておらず、複数のシステムが統合され、データが一元管理されているのが特徴です。そのため、ERPは統合基幹システムとも呼ばれます。
ERPを物流現場に導入することで、リアルタイムな情報の取得や情報の一元管理といったメリットが得られます。
ERPについてはこちらの「商業管理に欠かせないシステム「ERP」について!」をご覧ください。
IoTとは、「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と言われます。
IoTと聞くと、冷蔵庫や電子レンジなどのスマート家電を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実はビジネスでもIoTが広がってきています。
センサーでモノから情報を取得し、インターネット経由でクラウド上に蓄積、その蓄積したデータを分析しモノがヒトにフィードバックするといったことが可能です。
IoTを物流現場で活用することで、作業員の健康管理が効率化できたり、作業員の作業効率がアップしたりと様々なメリットが得られます。
IoTについてはこちらの「IoTでビジネスを変える!製造業が力を注ぐ「IoTのビジネス活用」とは」をご覧ください。
AIとは、「Artificial Intelligence」の略で、一般的には「知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」のことを指します。
物流の現場でAIを活用することで、自動で効率的な配送ルートを決定したり、自動で配送担当者のシフトを組んだりと様々なメリットが得られます。
ブロックチェーンとは、「分散型台帳」技術とも呼ばれている「インターネット上にある正確な取引履歴を暗号技術によって分散的に管理する仕組み」のことで、デジタル資産や暗号通貨のやり取りで活用されていることが多いです。
ブロックチェーンは、データの改ざんに強い、システムダウンが起きない、ハッキングに強いという3つの特徴があり、物流サプライチェーンが抱える課題を解決できると期待されています。
サプライチェーンの課題は、複数の企業間で交わす情報が標準化していないことや機密情報の扱いが難しいことなどが上げられますが、ブロックチェーン技術を活用することで、各企業は信頼性を担保しながら取引ができるようになります。
ブロックチェーンについてはこちらの「セキュリティ対策抜群!?ブロックチェーンの仕組みとは」をご覧ください。
TMSとは、「Transport Management System(トランスポート・マネジメント・システム)」の略で、「輸配送管理システム」を意味します。
物流に欠かせないシステムの中の1つで、ものが出荷されてから届くまでの流れをリアルタイムで管理するためのシステムです。
TMSを活用することで、物流コスト削減や属人化防止、配送品質向上といった様々なメリットが得られます。
TMSについてはこちらの「運輸・流通業界の救世主? TMSとは」をご覧ください。
WMSとは、「Warehouse Mangement System(ウェアハウス・マネジメント・システム)」の略で、「倉庫管理システム」を意味します。
物流に欠かせないシステムの1つで、入出荷する荷物や在庫の管理などをリアルタイムで行うことができ、倉庫内業務の効率化に役立ちます。
WMSを活用することで、在庫の差異や誤出荷の削減や倉庫内作業の効率化、倉庫内在庫のリアルタイムな見える化など様々なメリットが得られます。
WMSについてはこちらの「もう倉庫内業務を手作業でしない! 物流に欠かせないWMSとは」をご覧ください。
WCSとは「Warehouse Control System」の略で、日本語では「倉庫制御システム」と言われており、マテハン機器やIoT機器といった倉庫に導入されている設備をコントロールするシステムです。
設備に対して適切な搬送の指示をリアルタイムに行い、庫内における搬送物の流れを制御します。
WCSを活用することで、人手不足の解消や効率化と生産性の向上、エラーの削減、品質管理の向上など様々なメリットが得られます。
RTLSとは、「Real Time Location System」の略で、ヒトやモノが「ある時点でどこにあるか」を測定する技術のことです。
モノやヒトの流れを「識別子」「位置」「時刻」のパラメータでデジタル化し、リアルタイムに自動収集・蓄積することにより、動線や滞留をトレース可能にし、隠れていたムダを顕在化します。
物流の現場でRTLSを活用することで、作業員の安全性担保や車両や車両の衝突トラッキング、コンテナ保管の改善など様々なメリットが得られます。
スマートロジスティクスとは、ロジスティクスに関わる工程をIoTやAIなど最新のデジタル技術を活用し、スマートに行なっていこうという考えのことです。
梱包や流通加工、ピッキングや入出庫・商品管理といった一つ一つ手作業で行っている作業を効率化することができます。
スマートロジスティクスを導入することで、AIを活用した作業効率化やフォークリフトの無人運転実現、配送トラックの無人化、ドローンを活用した配送など様々な現場改善が実現されます。
スマートロジスティクスについてはこちらの「物流×IT!スマートロジスティクスとは」をご覧ください。
近年、物流業界におけるIT技術の進化は急速に進んでおり、これからの数年間でさらなる飛躍が期待されています。
本章では、今後の物流業界において注目される主要なトレンドについて解説します。
AI(人工知能)や機械学習技術は、すでに物流業界で多くの業務を効率化してきましたが、今後さらに重要な役割を果たすと予測されています。
特に、AIを活用したリアルタイムでの配送ルート最適化や需要予測は、配送コストの削減や顧客満足度の向上に繋がります。
また、AIによる自動化された在庫管理やピッキング作業の効率化も、倉庫運営の革新になります。
自動運転技術の進化により、無人トラックや自動配送車の導入が加速しています。
これにより、ドライバー不足問題が解消されるだけでなく、長距離配送におけるコスト削減や安全性の向上が期待されています。
また、物流センター内でも自動運転技術が活用され、無人フォークリフトやロボティクスによるピッキング作業の自動化が進んでいます。
5Gの普及に伴い、物流現場におけるIoTデバイスの活用がますます拡大します。
5Gによる超高速通信と低遅延なネットワーク環境は、リアルタイムでの在庫管理や配送トラッキングの精度を向上させ、より効率的な物流オペレーションを実現します。
また、IoTセンサーを活用して温度や湿度などの環境データを監視し、製品の品質管理を高度化することも可能になります。
ブロックチェーン技術は、サプライチェーン全体での透明性と信頼性を向上させる手段として注目されています。
物流業界でのブロックチェーン活用は、商品のトラッキングや取引の記録においてデータの改ざん防止や迅速な情報共有が可能となり、サプライチェーン全体の効率性と信頼性が向上します。
特に、複数の企業が関与する国際物流では、この技術が大きな価値を提供すると考えられています。
物流センターや倉庫におけるロボティクスの導入は今後も増加すると言われています。
自動ピッキングロボットやAGV(無人搬送車)の進化により、倉庫内作業の大部分が自動化され、効率と生産性が飛躍的に向上します。
また、AIによって制御されるロボットは、変動する需要に柔軟に対応し、労働力不足の課題解決にも繋がります。
今後、物流業界においてもサステナビリティの視点がますます重要になります。
環境負荷を低減するための省エネルギー技術や、再生可能エネルギーを利用した配送手段の開発が進むと考えられています。
電動トラック(EVトラック)やドローン配送など、エコロジカルな物流ソリューションの普及も、今後の大きなトレンドとして注目されています。
今回ご紹介した6つのIT技術トレンドは、物流業界に革新をもたらし、効率性向上やコスト削減、環境負荷の低減を実現するでしょう。
物流業界におけるIT技術の導入は、業務の効率化やコスト削減を実現するための鍵となっています。
SCMやERPといった管理システムから、IoTやAI、ブロックチェーン技術の活用まで、これらの技術は今後さらに進化し、物流の現場に大きな影響を与えると考えられます。
特にAIや自動運転技術の普及、5Gの活用によるリアルタイムなデータ管理は、これからの物流業界においてますます重要な役割を担っていくことが期待されています。