UX、ユーザーエクスペリエンスという言葉を聞いたことはありますか?
UXはユーザーが商品やサービスを通して体験・経験することという意味で、これまで顧客に対してUXの質を高めることが最も重要だと言われていました。
最近では、UXの質を高めるだけでなく、TXを高めていくことも大切だと言われています。
TXとは何を意味するのでしょうか。
今回は、業務をこなすうえで無視していくことはできない「TX」についてご紹介します。
TXとは、「Total eXperience(トータル・エクスペリエンス)」の略で、「総合的な体験や経験」のことです。
トータルや総合的という抽象的な言葉で説明してしまいましたが、具体的な内容はどのようなものかご紹介します。
トータルエクスペリエンスのトータルには、「UX」「EX」「CX」「MX」という4つの内容が含まれています。
まずは、UXについてお伝えします。
UXは、「User eXperience(ユーザー・エクスペリエンス)」の略で、「ユーザーがサービスや製品を通して得られる体験や経験」を意味します。
UXをより良いものにすることで、ユーザーの満足度を高めたり、商品やサービスなどブランドの信頼度向上が実現されます。
CXは、「Customer eXperience(カスタマー・エクスペリエンス)」の略で、「顧客が商品やサービスを利用することで得られる総合的な体験・経験」を意味します。
UXと混同されやすいですが、CXは、ユーザーが感じるUXが積み重なったものであるというイメージです。
飲食店を例に挙げると、入店からお店を出るまでの体験全てがCXで、「接客」「味」「清潔感」などそれぞれのシーンでの経験がUXとなります。
CXをより良いものにするためには、質の良いUXが必要不可欠です。
CXをより良いものにすることで、リピーターや口コミの獲得などが期待できます。
EXは、「Employee eXperience(エンプロイー・エクスペリエンス)」の略で、「従業員が働くことを通して得られる体験・経験」を意味します。
従業員からアンケートを取ったり、満足度を調査することで、社内環境がより良くなり、働きやすい環境につながります。
かつて企業は、ユーザーや顧客の満足度を最も重視していましたが、時代が進むにつれ業務に携わる社員にも目を向けるようになってきました。
MXは、「Multi eXperience(マルチ・エクスペリエンス)」の略で、「IoT*やAR・VR・MR**、デジタル技術を通して得られる体験・経験」を意味します。
アパレルショップなどにおいて、かつては店頭からでないと購入できませんでした。最近では店舗だけでなく、アプリやWebサイトといったオンラインでの購入も可能となってきています。
また、実際の商品をVRやARで見て購入することができるサービスが登場するなど、どんどんデジタル技術の活用が進んでいます。
このようなデジタル技術での体験がMXです。
*IoTについては、こちらの「IoTでビジネスを変える!製造業が力を注ぐ「IoTのビジネス活用」とは」をご覧ください。
**AR・VR・MRについては、こちらの「VR?AR?XRをどれだけ知っていますか?」をご覧ください。
これら4つを総合的に向上させるという戦略がTXです。
ユーザーや顧客が得られる体験や経験はもちろん、従業員が働くことを通して得られる体験や経験や、最先端技術を活用した体験や経験の満足度を高めていくことが大切です。
TXを向上させるにはどのようなことに取り組めば良いのでしょうか?
繰り返しになりますが、TXは「UX・CX・EX・MX」の4つを総合的に向上させるということなので、この4つの向上がTXの向上につながります。
この章では、TXを向上させる方法を4つに分けてご紹介いたします。
まずは、UXを向上させるために「ユーザーの期待に正しく答え」ましょう。
ユーザーが希望した結果や求めていた情報が得られるようにしましょう。
例えば、「人気のたこ焼き器」と調べて訪れたサイトに、お鍋がずらっと出てきたらどうでしょうか?
訪れたサイトに求めている情報がなければ、どんなに見た目が美しく操作性が良いサイトであっても、ユーザーは「ニーズが満たされなかった」という不満感を覚えてしまいます。
自社が持つサイトなどで、ページの内容が流入キーワードの解決策に値しているか考えてみましょう。
また、自社サイトにおける問い合わせ画面や予約フォーム画面などへの遷移方法がわかりづらい、3つのプランの値段を表記しているがそれぞれのプランにどのような差があるのかわからないなどのユーザーが感じるストレスを探し、そこを改善していきましょう。
次に、CXを向上させるために「顧客の行動全てに気を遣いましょう」。
まずは、顧客がどのように商品を認知し購入まで至るのかを考えてみます。
次に、認知から購入までの各段階での改善すべき課題を考えます。
そして、現状と顧客の要求とのギャップを埋めるための解決策を立て、改善をしましょう。
「改善すべき課題の発見➔解決のための施策立案➔改善➔新たな課題の発見・・・」と改善を繰り返すことがCXの向上には必要です。
顧客が経験する1つのことだけに気を付けるのではなく、顧客が体験する全てのことに目を向けるとCXは向上します。
顧客が体験する全てのことの想定が困難であれば、アンケートを実施してみたり、同業他社を訪れてみたりすると全体が見えてきます。
次に、EXを向上させるために「従業員のモチベーションを上げる意識」をしましょう。
従業員のモチベーションを上げる施策をすると、おのずと従業員の満足度も上がります。
従業員のために会社が動くのかと思われるかもしれませんが、EXを向上させることにより従業員のモチベーションが上がるので、結果的には業績や売上に良い影響を及ぼします。
従業員のモチベーションを上げる施策としては、「匿名従業員アンケート」や「入社一定期間後アンケート」を実施し、従業員が抱えている「良いと感じる項目」「満足度の低い項目」両方を把握するなどが挙げられます。
良いと感じる項目は伸ばし、満足度の低い項目は改善することで、社員の負担を軽減することができます。
また、産休や育休などといった福利厚生面を改善することでもEX向上が期待できるでしょう。
最後は、MXを向上させるために、できる限り「あらゆる媒体からコンタクトを可能に」しましょう。
とある宅配ピザ店を例に挙げてみます。
ピザを店舗で注文し店舗で商品を受け取るのはもちろん、電話での宅配注文も一般的だと思います。
それだけでなく、お店の公式スマートフォンアプリやWebサイト、UberEatsなどの商品宅配アプリなどからの注文も普及してきています。
さらに、スマートウォッチや、Alexaなどのスマートスピーカーといったあらゆる媒体を通しての注文が可能となっています。
注文をデジタル化したことにより、顧客は注文したピザの追跡ができるようになりました。
あらゆる媒体から注文できることで顧客の注文へのハードルが下がり、また、商品の追跡もできることで、「まだ届かないな、忘れられているのかな」などといった顧客の不安も軽減させることができます。
VRなどの仮想空間で商品の閲覧を可能にするといった大がかりなことを想像されるかもしれません。
もちろんそれもMXを向上させるための1つの手段ですが、まずは、身近でデジタル化できそうなところから取り組んでみてください。
ディズニーワールドは、顧客がテーマパーク内で一日中楽しむことができるトータルエクスペリエンスを提供しています。
パーク内には、アトラクションやショー、レストランなど多様な要素が組み合わさっており、来場者は視覚や聴覚、触覚、味覚に関する刺激的な体験ができます。
さらに、キャラクターとの出会いやサービスの質も重視され、顧客に夢と魔法のあるトータルエクスペリエンスを提供しています。
iPhoneで有名なAppleでは、ただ製品を販売するだけでなく、顧客が製品を実際に触れたり専門的なサポートを受けたりできる店舗を展開しています。
アップルストアでは、視覚的にアプローチする展示やインタラクティブな体験を提供し、専門スタッフが顧客の質問に対応します。製品の購入からサポートまで、一貫したTXを提供しています。
ニューバランスは、スポーツシューズの購入時にTXを追求しています。
店舗では、シューズが売られているだけではなく、スタッフが顧客の足の形状や歩行スタイルを確認し、最適なシューズを提案してもらうことができます。
アメリカで人気のある靴の通販会社ZapposはCXが高いことで有名です。
返品の際の送料や手数料は無料で、購入に当たり、足にフィットするサイズがわからない場合には、複数サイズを送ってもらい、試着してから不要な靴を返品しても良いというサービスを提供しています。
また、Zapposは購入後、翌日に配送し、顧客対応は24時間365日受け付けています。
Zapposは、EXの取り組みもユニークだと言われています。
Zappos社内にはヒエラルキーがありません。
「ホラクラシー」と呼ばれる役職や階級などが存在しない組織で、意思決定権も分散されています。
上司がいないため、一人ひとりの仕事の裁量が大きく、自由度は高いが各社員の責任も大きい組織形態となっています。
今回は、「UX」「EX」「CX」「MX」という4つを総合的に向上させることを目的とした「TX」、トータルエクスペリエンスについてご紹介いたしました。
TXを向上させるには4つそれぞれを向上させる必要があり、そのためには顧客の満足度だけでなく、従業員の満足度も上げて行かなければなりません。
今すぐにTXを向上させることは難しいかもしれませんが、TXの質は必ず集客や業績に結びつきます。
「UX」「EX」「CX」「MX」のどれか1つだけを磨いていくのではなく、それぞれを高めていくことが必要です。