テレビを観ているときに流れてくることがある、「テレビショッピング」。 みなさん一度は観たことや実際に商品を購入されたことがあるのではないでしょうか?
それでは、今注目されているショッピング形態「ライブコマース」についてはご存知ですか?
「テレビショッピング」はテレビでチャンネルを回すと目に留まることがある、テレビ番組上の通販サービスです。
「ライブコマース」は、テレビショッピングのインターネット版のようなサービスです。 ライブコマースはテレビにはない、販売側と購入側の双方向性があるのが特徴です。今回の記事では、その「ライブコマース」について紹介していきます。
ライブコマースとは
ライブコマースとは、ライブ動画とネットショッピングを組み合わせた新しいショッピング形態です。
ライブコマースでは、ライブ配信上で商品が紹介されます。視聴者(購入側・消費者)はその商品に対してリアルタイムで質問やコメントをすることができ、配信者(販売側)はそれに応えます。また、視聴者はそのライブ配信を見てその商品をライブ配信上で購入することが可能です。ライブ配信なので、視聴者は商品のサイズ感や色、使用感などより詳しい情報を獲得することができるのです。
本記事での動画コマース・動画EC・ライブコマースの定義
ライブコマースと似たような意味の言葉に、「動画EC」や「動画コマース」があります。
具体的な違いは確立しておらず、それぞれがあいまいに使われているのが事実です。
そこで、本記事で扱う動画コマース、動画ECとライブコマースの定義をしておきます。
まず、動画コマースと動画ECについては、「商品紹介を文面だけでなく動画も活用して行う」という意味で扱います。
ライブコマースに関しては、動画コマースをリアルタイム・ライブ配信で行い、「配信者と視聴者がコメントなどを通じてリアルタイムにコミュニケーションを取ることができる」という意味を持つ言葉として扱います。
ライブコマースのメリット5つ
次にライブコマースについてのメリットを5つ紹介したいと思います。
- 実際の組み立てや利用方法を伝えることができる
- ミスマッチが減り、顧客満足度を上げることができる
- 視聴者同士で購買意欲を高めあってくれる
- 店と店員それぞれのファンが増える
- より広いエリアのターゲット層にアプローチができる
実際の組み立てや利用方法を伝えることができる
まず1つ目は、実際の組み立てや利用方法を伝えられることです。
リアルタイムで、紹介する商品の実際の組み立て方法や利用方法、また、質感や色見などを伝えることが可能です。写真や文字だけではなかなか伝わりにくいことも、動画ならより詳しく伝えることができます。
さらに、視聴者はより詳しく知りたいことに関して質問・コメントをすることができるので、それに応えることで、視聴者のニーズにしっかりと合った商品紹介ができます。
ミスマッチが減り、顧客満足度を上げることができる
2つ目は、ミスマッチが減り、顧客満足度を上げることができることです。
1つ目の「動画ならより詳しく伝えることができる」というメリットから、視聴者の商品への期待と、実際に購入した商品とのギャップ・ミスマッチを減らすことが可能です。ネットショッピングで発生しやすい、期待と実物とのギャップをなくすことで、顧客満足度が上がり、商品やショップへの信頼度へとつながります。
視聴者同士で購買意欲を高めあってくれる
3つ目は、「行列ができるところに行きたくなる」「よく売れているから私も買う」という心理効果(バンドワゴン効果)のように、視聴者同士で購買意欲を促進させあってくれることです。
ライブコマースは、リアルタイムで質問・コメントができるだけでなく、他の視聴者が投げかけた質問・コメントも見ることができます。視聴者が「これ欲しい!」や「絶対買う!」などの他の視聴者のコメントを見ることで購買意欲がより掻き立てられるのです。
店と店員それぞれのファンが増える
4つ目は、お店と店員のそれぞれのファンが増えることです。
まず、ライブ配信を行うことで、商品の良さや価値が伝わりやすくなるので、商品やお店自体へのファンが増えます。
日本のライブコマース市場では、超有名インフルエンサーがライブ配信者として起用されることは少なく、紹介する商品会社の社員や店員自らが配信を担うことが多い傾向にあり、企業インフルエンサーと呼ばれる販売会社自前のインフルエンサーの登場も見られます。
また、ライブ配信であるため配信者の人柄が表れやすく、商品のファンだけでなく配信している店員(企業インフルエンサー)自体へのファンの増加が見込まれます。すると、「この配信者がおすすめするなら買いたい」など、購入を決断するきっかけの増加が期待できます。
より広いエリアのターゲット層にアプローチができる
5つ目は、より広いエリアのターゲット層にアプローチができることです。
リアルで商品を売るためには陳列棚や在庫、会計システムなどを置くためのスペース、つまり店舗が必要です。それだけでなく、実際に商品を購入してもらうためには、ターゲットに店舗へと足を運んでもらう必要があります。もちろん店舗では、実際に商品を手に取り見てもらうことができるというメリットがあります。しかし、ターゲットは「その店舗に来ることができる人」に絞られてしまいます。
一方、ライブコマースだと配信する場所の確保は必要なものの、ネット環境さえあれば、全国どこからでも配信することが可能です。つまり、遠方にいる人もターゲット対象とすることができるようになります。 さらに、配信環境を整えることで、日本全国だけでなく「全世界のユーザーをターゲットに」することもできるかもしれません。
ライブコマースでの注意点と対処方法4つ
次は、ライブコマースを行う際に起こりうる注意点4つをそれぞれ対処方法と併せて紹介します。
- 視聴者が自分の意見を取り扱ってくれないと感じる
- 実演で、紹介している特徴と真逆のことが起きてしまう放送事故
- 集客が十分でない場合、視聴者が集まらない恐れがある
- 配信者は紹介する商品のプロフェッショナルではない
視聴者が自分の意見を取り扱ってくれないと感じる
まず1つ目は、視聴者が自分の意見を取り扱ってくれないと感じてしまうことです。
ライブコマース最大の特徴であり、またメリットでもある、「リアルタイムコミュニケーション」から考えられるトラブルです。
配信者が、視聴者からのコメントを拾うことができなかった場合、そのコメントをした視聴者はどう思うのでしょうか。視聴者は「私のコメントを拾ってくれなかった」とライブ配信から離脱してしまうかもしれません。また、それが続いてしまうと、元々そのお店のファンであった人までも離れてしまうかもしれません。
→そうならないために、全てのコメントを拾えない状況にあるとしても、頻出なコメントには応えるようにしましょう。そうすることで、対応したのは一つのコメントですが、似たようなコメントをした他の視聴者も「自分のコメントに反応してもらえた」と感じてもらうことができます。
実演で、紹介している特徴と真逆のことが起きてしまう放送事故
2つ目は、実演で紹介している特徴と真逆のことがライブ配信中に起きてしまう放送事故です。
例えば、「絶対にくっつかないフライパン」と紹介しているにもかかわらず、ライブでの実演販売で食材がフライパンにこべりついてしまったらどうなるでしょうか。その商品に対しての信頼も、それを販売している企業への信頼も落ちてしまうでしょう。
→そういった放送事故が起きてしまわないために、リハーサルなどを入念に行い、推奨したい内容と、ライブで紹介する内容が一致するようにしておきましょう。
集客が十分でない場合、視聴者が集まらない恐れがある
3つ目は、集客が十分でない場合、視聴者が集まらない恐れがあることです。
ライブコマースを実施したが、全然人が集まらず、「視聴者からのコメントが来ない」「売上が思うように伸びない」などの状況になってしまうかもしれません。
→そうならないために、メルマガ会員へのメール通知など、視聴者への告知が必要です。「毎週決まった曜日にライブコマースを実施する」「配信曜日や日時を変えて視聴率と売上の調査をし、紹介する商品のターゲット顧客によって配信曜日や時間を変えてみる」など、さまざまな方法を試し、最低限の集客力をつけましょう。
配信者は紹介する商品のプロフェッショナルではない
4つ目は、自社以外の人に配信をしてもらう際、配信者は紹介する商品のプロフェッショナルではないということです。
例えば、服の商品紹介ページでは、「Lサイズは150~160cm向け」と書いてあるのに、ライブ配信では、「Lサイズは170cm向けです」と発信してしまうと、視聴者は混乱してしまいます。
このように、配信者が紹介する商品に詳しくないと、視聴者からのコメントに対して正しく対応することができず、信頼が落ちてしまいます。
→対策として、紹介する商品に精通していない人に配信をしてもらう際には、その配信者の近くに商品に詳しい人をつけ、配信者をサポートするなど、しっかりと体制を整えておきましょう。
中国と日本の比較
中国では2017年ごろから、ライブコマースが爆発的に流行しています。しかし、日本でのライブコマースはまだ普及しているとは言えない段階にあります。
そこで、中国と日本でのライブコマース事情を比較し、どうして日本と中国では流行り方に差があるのかを考察していきます。
中国 | 日本 | |
---|---|---|
販売形態 | 実際の店舗やECショップよりも安く購入できる。 タイムセールなどのイベントも行っている。 |
実際の店舗やECショップと変わらない価格設定が多い。 ライブ配信中に、クーポンコードなどを発信することもある。 |
配信者 | KOL(Key Opinion Leader)と言われる、超有名インフルエンサーが起用される。 薇娅(viya)や李佳琦(Austin)と呼ばれる中国で大人気のインフルエンサーなど。 |
有名人がライブコマースに携わることは少なく、紹介する商品のショップ店員など、企業が自前で配信者を用意することが多い。 |
商品情報 | ライブ配信上にその商品が表示され、そこから直接商品購入ができる。 | 配信プラットフォームによってはライブ配信上に、その時に紹介されている商品が表示されておらず、どの商品が紹介されているのかがわかりにくいことがある。 |
購入までのステップ | 購入までのステップが短く購入意欲が落ちにくい。 ライブコマース上で購入が完結できるサービスが多い。 |
商品を選択しカートに入れてから決算画面に進むなど、購入までのステップが長いものが目立つ。 |
このように、中国では、ライブコマース上の方が実際よりも商品を安価に購入できるなど、ライブコマースへの集客に注力しているように思われます。また、現地の超有名インフルエンサーを起用することで、商品の認知度が高くない場合でも「このインフルエンサーがおすすめするなら!」と購入に至るケースも多いとされています。
一方日本でのライブコマースは、軸となるのは店舗での売上であり、ライブコマースはあくまでもブランドを周知させるため、PR目的として利用されていることが多い状況にあります。
さいごに
ライブコマースは、動画で商品紹介を行えるだけでなく、リアルタイムで視聴者と配信者がコミュニケーションを取ることを可能にします。さらに視聴者は、そのライブコマースを自分の目で見ることによって、通常のネットショッピングよりも詳細で具体的な情報を手に入れることができます。
中国では超有名インフルエンサーの起用などから普及しているライブコマースですが、日本では普及しているとは言い難い状況にあります。日本のライブコマースを、成功している中国のライブコマースのようなプラットフォームにしていくのもいいですが、企業インフルエンサーを育てていくなど、日本独自の進化を続けて浸透していくことを期待したいですね。
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