「2025年の崖」といわれている、基幹系システム担当者の退職や、ブラックボックス化*、レガシーシステムの増加**が深刻化しています。
また、レガシーシステムの多くがブラックボックス化してしまっていると言われています。
そんなレガシーシステムを刷新する「レガシーマイグレーション」という考えがあります。
今回は、「レガシーマイグレーション」について基本的なことから、メリットや実際に行う方法まで詳しくご紹介いたします。
*ブラックボックス化とは、業務が属人化しているため限られた人しか業務プロセスを知らず、他の人には業務内容がわからなくなること。
**レガシーシステムとは、最新の技術や製品を用いた情報システムと対比して、相対的に時代遅れとなった古いシステムのこと。
レガシーマイグレーションとは
レガシーマイグレーション(Legacy Migration)とは、「Legacy(時代遅れの)」「Migration(移行)」という単語の意味通り、企業にあるレガシー化したシステムを、新しい技術を取り入れたシステムに移行することです。
2025年にかけて、システムの老朽化や技術者の高齢化、退職によりメンテナンスできる人が減っていきます。
また、長期にわたりシステムが運用されているため複雑化してきており、全体像が把握できなくなってきています。
約7割の企業がレガシーシステムを足かせだと感じ、DX推進を妨げられているという調査もあります。
一方、現段階では特に業務に支障がでていないことから、危機感を覚えていない企業がたくさんあるのも事実です。
レガシーシステムの危機感に気が付いたときには手遅れになってしまっている場合があります。
早い段階から、システム活用の全体像を想定・設計し、レガシーマイグレーションすることが大切です。
レガシーマイグレーションの背景
レガシーシステムは、DXが推進される昨今、かなり多くの企業で問題となっています。
経済産業省が公開している「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」では、レガシーシステムの危険性に気づかず使い続けた場合、2025年以降に年間最大12兆円もの損失になると予測されています。
そのため、レガシーシステムを改善(レガシーマイグレーション)することが必要だとされてきました。
モダナイゼーション・リプレイスとの違い
モダナイゼーションとの違い
モダナイゼーションとは、日本語で「現代化」や「近代化」を意味し、IT業界においては、古いシステムを現代にマッチするシステムに刷新することです。
レガシーマイグレーションが古いシステムを新しいシステムに移行するのに対し、モダナイゼーションは新しいシステムにするために古いシステムを作り変えます。
モダナイゼーションについてはこちらの「DXにモダナイゼーションが必要とされるワケとは?手段や注意点もご紹介!」でさらに詳しくご紹介しています。
リプレイスとの違い
リプレイスとは、日本語で「取り替える」を意味し、IT分野では、既存システムを継続的に運用するために古くなったソフトウェアを新しいものに交換することを指します。
リプレイスは、システムのパーツを交換して機能性を高めていくことで、システム自体を新しいシステムに移行するレガシーマイグレーションとは異なります。
レガシーマイグレーションのメリット
セキュリティ強化
レガシーシステムは相対的に時代遅れとなった古いシステムであるため、新たな技術の活用が難しく、情報の漏洩やサイバー攻撃を受けるなどのセキュリティリスクがあります。
企業情報や顧客情報が漏洩したり、盗まれたりすると、他企業からの信頼を失ってしまう恐れがあります。
レガシーマイグレーションで新システムへ移行しセキュリティ強化を実現させると、顧客情報や企業をさらに守れるようになります。
コスト削減
古く複雑化したレガシーシステムを維持・運用していくには、膨大なコストが必要になります。
また、自社のレガシーシステムのサポートが終了した場合、自社で保守する必要がありさらにコストが膨らんでしまいます。
レガシーマイグレーションを進め新システムに移行することで、コスト削減に繋がります。
新技術の活用
レガシーマイグレーションで、古いシステムを新しいシステムに移行することにより、既存システムではとりいれられなかった新しい技術を活用できる可能性があります。
新システムを活用することで、業務効率化や、生産性の向上を期待することができます。
レガシーマイグレーションの手法
レガシーマイグレーションをするための方法は「リホスト」「リライト」「リビルド」の3つあります。
リホスト
まず1つ目は、「リホスト」です。
リホストでは、システムのビジネスロジックやプログラミング言語を変えずにシステムのプラットフォームだけを移行します。
既存のシステムと同じ言語のまま変更していくため、導入機関の短縮やコストの削減ができます。
既存のシステム自体を変えるわけではないため、現在利用しているレガシーシステムに何か課題や問題がある場合、それを解決できないまま移行してしまいます。
現在のシステムに問題がなく、コストや期間を抑えたい場合に有効な方法です。
リライト
2つ目は、「リライト」です。
リライトは、リホストと同じくビジネスロジックは変更しません。
プログラミング言語とプラットフォームの2つを刷新します。
使用する言語が変わる分導入期間は伸びてしまいますが、プログラムとの互換性が高まり、システムの効率化やセキュリティ強化などのメリットが生まれます。
リホストと同様に、レガシーシステムのビジネスロジックは継続されるため、属人化・ブラックボックス状態から抜け出すことができず、保守性に欠けてしまいます。
比較的短期間で導入を終わらせたいかつ、既存の言語では新技術を活用できない場合に有効な方法です。
リビルド
最後3つ目は、「リビルド」です。
リビルドはその名の通り、レガシーシステムの設計・プログラム・基盤を全て廃棄し、全面的に再構築します。
リホストとリライトに比べ、コストや導入期間はもちろん長くなりますが、ビジネスロジックから再設計するため、レガシーシステム全ての問題を解決することができます。
リビルドは、リホストとリライトのデメリットを払拭するための手法で、DXに向けた柔軟で拡張性のあるシステム実現のために有効な手法です。
レガシーマイグレーションを進める手順
では、実際にマイグレーションを行う際にはどのような手順で進めれば良いのでしょうか。
全体的な流れや注意点をおさえていきます。
スケジュールを決める
レガシーマイグレーションの対象になるシステムは、業務内において期間的な役割を担っていることがしばしばあるため、システムを移行する際のそのシステムが利用できなくなる期間をできる限り短くする必要があります。
そのため、システム全体の移行からデータの移行までしっかりとしたスケジュールを引き、計画的に進めることが大切です。
システムを見直す
レガシーマイグレーションは、単に環境を移行するだけではありません。
システムの改善すべき点や不満な点を現場から洗い出し、対応することが大切です。
どのシステムのどの部分を改善すべきなのか、既存の機能で残したい部分はどこかなど、便利かつ効率的に業務に取り組める環境が整えられるように、システムの見直しもしっかりと行いましょう。
レガシーマイグレーションを行う手法の選定
システムを見直す際には、引き継ぐ機能や不要な機能、新たに追加する機能などを整理し、目的を明確にすることが重要です。
目的が明確になり、どの程度のシステム移行が必要なのかが決まれば、最適な手法も選択できるようになるでしょう。
レガシーマイグレーションの代表的な手法は、先程の章でご紹介した「リホスト」「リライト」「リビルド」です。
3つの手法のメリットとデメリットを考慮した上で、目的に合わせて手法を決めましょう。
社内コミュニケーションの活性化
レガシーマイグレーションを進めるためには、既存システムの見える化が必要になってくるため、レガシーマイグレーション促進に向けて、社内で活発的にコミュニケーションを取る必要があります。
そこで活躍するのがビジネスチャットツールです。
ビジネスチャットツールには緑のアイコンでおなじみの「LINE」のように使える「LINE WORKS*」など様々な種類があります。
ビジネスチャットツールについては、「コミュニケーションが変わる!?ビジネスチャットを導入すべき理由とその選び方」でツールの選定方法などさらに詳しくご紹介しています。
ビジネスチャットツールを使い、グループチャットを作成することで、レガシーマイグレーションに携わるメンバーに作業の進捗を共有したり、タスクを振るなどができるため、お互いの状況を確認しながらレガシーマイグレーションを進めることができます。
*LINE WORKSについては「https://www.isi-grp.co.jp/communication/lineworks/」をご覧ください。
さいごに
古く時代遅れとなってしまっているレガシーシステムを刷新する、「レガシーマイグレーション」についてご紹介いたしました。
レガシーシステムがDXの足かせとなってしまっている企業や、そもそもレガシーシステムの危険性に気が付いていない企業がまだまだたくさんあります。
2025年以降に最大12兆円の損失が出ると予測されている「2025年の壁」を乗り越えるためにも、積極的にレガシーマイグレーションを行っていきましょう。
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