「スマートウォッチ」や「スマートグラス」が普及し、それと連動させるように体調管理や、行動記録が把握できるようになってきました。
最近では、スマートフォンのアプリケーションなどで、移動履歴をマイルとして貯めて、景品やポイントと交換するサービスも登場しています。
このように、人の行動や体調管理とインターネットを連動させる取り組みを「IoB」と言います。
そこで今回は、「IoB」についてご紹介いたします。
目次
1. IoBとは
IoBとは、「Internet of Behavior」または「Internet of Bodies」の略で、「Internet of Behavior」は「行動のインターネット」、「Internet of Bodies」は「人間の体とインターネットをつなげること」と訳されます。
「Internet of Bodies」は、医療に関する分野で使われることが多く、「Internet of Behavior」は、日常生活で取り組まれる際に使われることが多いですが、どちらも、「生活とインターネットをつなげること」なので、総称して「IoB」と呼ばれています。
Internet of Bodiesとは
Internet of Bodiesとは、体にインターネットをつなげた状態で、人の動作や行動をデジタルで追跡する技術です。スマートウォッチのように、体外に装着して心拍数や運動強度を測り記録するツールなどがこれにあたります。
Internet of Behaviorとは
個人の位置情報や運動履歴、購買履歴、閲覧したWebページなどから情報を収集し、快適な生活を実現できるよう支援するITシステムのことです。
2. IoBとIoTの違い
IoBと似た言葉である「IoT」という単語は一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、IoBという単語はまだまだ馴染みが薄いと思います。
そこで、この章では、IoBとIoTの違いについて触れていきます。
IoTとは、「Internet of Things」の頭文字を取ったもので、「モノのインターネット」と訳されます。
従来インターネットに接続されていなかった様々なモノがインターネットと接続されることによって、機械に声をかけるだけで、照明やテレビなどをオンにしたり、湯船にお湯を貯めたりと、より高い価値やサービスを提供することが可能になります。
IoTは、「モノ」とインターネットをつなぐ、IoBは「人」とインターネットをつなぐ、この点でIoBとIoTが違うと言えます。
IoBは、スマートフォンやスマートウォッチなどのIoTデバイスを用いて、睡眠状態や食事パターン、心拍数などの身体データを管理・分析するなど、IoTがあってこそのものなので、IoTが拡張したものと捉えても良いかもしれません。
3. IoBの活用例
位置情報の活用
出先から帰ろうとした際に、Googleからお店のレビューを求められることがあります。
GPSやBluetoothなどを活用し、ユーザーの位置を把握します。
そして、その位置情報から通知やメールを活用し、ユーザーにレビューのリクエストを送信します。
リアルタイムで答えてもらうため、ユーザーからのレビューの信頼度が高くなるのはもちろん、迅速にサービス内容を改善できます。
ヘルスモニタリング
スマートフォンやスマートウォッチなどから心拍数や睡眠パターン、血糖値などを把握することで、食習慣の改善提案やリアルタイムの遠隔ヘルスモニタリングが可能になります。
後ほどご紹介しますが、体内内蔵型のデバイスや、脳にデバイスを接続して脳から直接情報を取得する方法を活用すれば、病気や疾患の予知が可能になるかもしれません。
4. IoBが目指すところ
IoBは、いきなり普及するものではなく、段階を踏んで浸透していくと言われています。
その段階は3つのフェーズに分かれており、それぞれについて説明していきます。
第一フェーズ「ウェアラブル」
ウェアラブルは「定量化」と言われている段階で、「スマートウォッチ」や「スマートグラス」など身体に触れるデバイスを利用します。
個人の身体データを数値として可視化し、活用する段階で、すでに世界中で数多く実現されています。
現在のIoBはこの段階まで実現できていると言われており、以下で説明している、第二フェーズの「体内内臓型」や、第三フェーズの「ウェットウェア」の実現はいまだされていません。
第二フェーズ「体内内臓型」
体内に埋め込まれたデバイスにより内蔵などの情報を取得して体調管理を行う段階です。
「体内に埋め込む」と聞くと気が引けるかも知れないですが、従来医療で用いられる心臓用のペースメーカーなどをイメージしていただけるといいかと思います。
現在は、医療分野ではなく健康促進のために利用されることが多いですが、今後、医療分野でIoBデバイスが活用される機会が増えることが予想されています。
第三フェーズ「ウェットウェア」
最後は、「ウェットウェア」です。脳に直接IoBデバイスを埋め込んで情報を取得します。
内臓から情報を取得するためには、臓器の数だけ埋め込まないといけないですが、ウェットウェアは、脳にだけ装着すれば情報を取得することができるようになります。
ただ、現状としてウェットウェアはまだ実用化されていません。イメージは持たれているものの、技術面や、後ほどご紹介する課題から、具体的なウェットウェアが開発されていない状態です。
5. IoBの問題点
機器のメンテナンス
ウェアラブルデバイスは、身に着けて使用するものなので、メンテナンスに関しては問題ありませんが、体内内臓型やウェットウェアの場合、初期不良や経年劣化からデバイスが故障すると一度取り出してメンテナンスしなければなりません。
サイバー攻撃への対応
IoBデバイスがサイバーテロの被害に遭遇し、機器に蓄積された個人情報が悪用される危険性があります。
IoBデバイスへの不正アクセスにより、誤作動が生じてしまったり、抜き取られた情報を人質のようにして身代金を要求されるなどといった犯罪も考えられます。
責任の所在の判断が難しい
使用中のIoB機器に不具合が発生したり、トラブルが起こったときの対応をどうするのかが課題となっています。
もともと機器に不具合があったのか、使用方法が悪かったのかが断定できないと、開発者と使用者のどちらが責任を担うのかが定められません。
第二フェーズ・第三フェーズの活用までとなると、ユーザー自身の判断になってくると考えられますが、これらの課題をどのように対処していくのかがIoBを進めていくにあたり、重要であると考えられます。
さいごに
IoTという言葉と技術が普及した今、次は「IoB」が来ると言われています。第一フェーズは普及しつつありますが、第二フェーズ・第三フェーズの実現はまだまだだと考えられます。
IoBがさらに発展することで、自宅にいながら病気の早期発見ができるようになるなど、医療分野での活躍が期待されています。
また、医療分野だけでなくとも、行動履歴や購買履歴を分析していくことで、ますます快適な生活を送ることができるようになります。
トレンドとなっている技術ではありますが、サイバー攻撃への懸念など問題点があるのも事実です。
この記事を読んでいただいたのを機に、IoBの特徴や課題点を把握しながら、今後のIoBを気にかけてみてください。
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