GRANDIT BLOG

システム刷新の落とし穴!本当は怖い「現行踏襲」

作成者: ERPグループ|2024年11月5日

システム刷新で頻出する「現行踏襲」とは

システムを刷新する際には、新システム選定・開発の材料として「要求事項一覧」の作成が必要となります。
このとき、新システムに要求される機能は、原則は各企業の業務に則って整理されます。
【参考:システム選定の前に!現行業務の整理における注意点

とは言うものの、各業務の目的や必要条件、非定常業務までを含めて全体的に把握、整理できるメンバは、ある程度の人員規模・拠点規模のある企業だと限られることが多いです。(1人もいないということもままあります。)
そんなとき、新システムへの要求事項の拠り所として「現行システムで出来ていること」が登場します。
例えば、新システムとしてパッケージの導入を考えている企業であれば、現行システムの画面あるいは項目レベルでパッケージシステムとのマッピングを行い、そのFit率によりパッケージシステムを評価するといった手法になります。
【参考:システム導入時に行うべき「Fit&Gap分析」とは?

さらには、マッピングで出てきたGapについても、パッケージのカスタマイズにより現行システムに寄せていく=現行を正として新システムを構築していく、という考え方を採用する場合もあります。この考え方を一般的に「現行踏襲」と呼びます。

「現行踏襲」の何が危ないのか

現行踏襲は一見シンプルかつ間違いのない考え方のように見えるので、システム刷新の要件定義の場で、特に実業務に携わる現場ユーザから頻出する単語になります。
私自身、要件定義時にユーザから「今と同じでいいよ」と言われた経験が何度もあります。ユーザにとっては実業務の遂行が第一であり、使用するシステムは慣れ親しんだものが使いやすく、「今と同じ」が一番なのは当然です。
ただ、実際のところ「現行踏襲」「今と同じ」が通用するケースはごく限られており、大まかに以下の点でプロジェクトに悪影響を及ぼすことが多いです。

  1. 現行踏襲だからとFit&Gap分析が甘くなり、Gapの洗い出しや対応方法の詳細化が進まず、設計フェーズの遅延やユーザ受入検証での問題発覚リスクが高まる
  2. ユーザの新システムに対する理解が進まず、設計フェーズの遅延やユーザ受入検証での問題発覚リスクが高まる
  3. 現行システム仕様を新システムに踏襲することの難易度が高く、実は優先度の低い要件に対しても現行踏襲を実施しようとした結果、開発コストが肥大化する
  4. 現行システムの仕様書が明確に残っておらず、現行システムをプログラム側から解析し仕様を読み解く、いわゆるリバースエンジニアリングが必要となり、コストの肥大化とプロジェクトの長期化を招く

例えばこんなケース

以下のようなシステム刷新プロジェクトがあるとしましょう。

  • 現行基幹システムは20年以上稼働しているスクラッチシステムで、老朽化を理由にERPパッケージへの乗り換えを検討
  • 現行システム開発当時のメンバは社内・保守ベンダー含めて1人もいない状態
  • 現行システムの仕様書は古新聞となっており、ユーザは各部署あるいは担当者オリジナルのマニュアルに沿ってシステムを使用している

こういったケースの場合、以下のようなことが考えられます。

・現行システムに、誰が何のために使っているのか不明な画面がある
・現行システムの画面に、どこに連携され何に使用されているのか不明な入力項目がある
・現行システムのプログラムのなかに特定ケースに対する固有処理が存在し、それが現在の業務でも必要かどうかを判断できない
・現行システム固有の制限に基づくシステム仕様が存在し、それが業務的に必要かどうかを判断できない

このような状態のプロジェクトで、新システムに必要な要件を整理せずに「現行踏襲」を是としてシステム刷新を進めると、上述の①②③④のほか、そもそも全く不要な機能を新システムに盛り込んでしまい、無意味なコストがかかるといった事態を招く可能性すらあります。

どうすれば「現行踏襲」の落とし穴にはまるのを防げるか

上述のケースは極端な例ですが、システム刷新プロジェクトで「現行踏襲」を是とした場合、類似の事態が大なり小なり発生する可能性はゼロではありません。
このような事態を防ぐために、プロジェクト開始の事前準備として以下を実施することが有効です。

  • システム刷新プロジェクトの推進室では、「今と同じ」「現行踏襲」の意味する「今」「現行」を事前に調査する
  • 「今」「現行」のシステム仕様に対して業務要件を紐づけ、要否や優先度を整理する
  • 「今」「現行」のシステム仕様が不明瞭な場合は、該当機能については「現行踏襲」が不可能であることを明確にする
  • 現場ユーザに対して、プロジェクトの方針をあらかじめ共有する
    ・いわゆるFit To Standardの方針であれば原則「今と同じ」発言を禁じる
    ・現行踏襲の方針である場合も、現行のシステムではなく業務要件の観点で新システム仕様をチェックする など

まとめ

本稿ではシステム刷新プロジェクトで頻出する「現行踏襲」という言葉の危険性と、事前の調査や整理の重要性についてご紹介しました。
とはいえ、特に基幹システムの刷新案件では規模も大きく、現行システムの事前調査や整理がいかに重要といえども、どのように進めるか途方に暮れてしまうこともあると思います。

基幹システムやERPパッケージのなかには、業務単位でモジュールが分かれており、部分的な導入が可能なものが多く存在します。
このようなパッケージシステムを採用すると、基幹システムの全範囲を一度に刷新するのではなく、モジュール単位で分割導入していくことが可能になります。
分割導入を取り入れることにより、事前の調査や整理の範囲を絞り込み、作業負荷の軽減が狙えます。

弊社アイ・エス・アイソフトウェアーで取り扱っているERPパッケージ「GRANDIT」も、業務単位でモジュールが分かれており、分割導入が可能となっています。
基幹システム刷新の進め方でお悩みでしたら、ぜひ弊社までお問い合わせください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

GRANDITの機能や特徴については紹介資料をダウンロード!