日本国内でDXやIT化がすすむ中、IT技術者の不足が深刻になってきています。
そんな中で、国外の企業に委託する「オフショア開発」という開発形態が普及しました。
そこで今回は、「オフショア開発」について基本的なことから、オンショア開発やニアショア開発の違いなどをご紹介いたします。
1. オフショア開発とは
オフショア(offshore)開発とは、アプリケーション開発やシステム開発などで、海外の開発企業に委託したり、海外の現地法人に発注することです。
近年では、開発先としてベトナムやインド、インドネシア、バングラデシュなどのアジア各国に拠点が広がっており、中東やアフリカへの委託も始まっています。
日本でのオフショア開発は、半数以上がベトナムへの委託となっているようです。
また、開発以外にもソフトウェアのテストやデータ入力、コールセンターのサポート常務も海外で行われ始めています。
「IT化」や「DX」が進む中で日本でのIT人材が需要に対して不足しているため、人的リソース不足を解消するための定番手段となりつつあります。
2. オンショア開発やニアショア開発との違い
オンショアと似た言葉に「オンショア」と「ニアショア」があります。
3つの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。
オンショアは、オフショアの対義語として使われる言葉で、「開発を全て自社内で完結させること」です。
ニアショアは、「一部または全ての開発を日本国内の地方都市に委託すること」です。
まとめると、オフショアは「海外に委託する」、オンショアは「委託なし」、ニアショアは「国内地方都市に委託する」というところに違いがあります。
3. オフショア開発が注目される理由
日本国内では2025年までに36万人、2030年までに45万人のIT人材が不足すると予測されています*。
IT人材の育成がIT技術の発展に間に合っていないため、今後IT人材の不足は深刻化すると言われています。
そこで、企業として発展していくために、オフショア開発が注目されるようになりました。
また、オフショア委託国のIT技術が向上していることもオフショア開発が注目される理由でもあります。
国内での開発より安価なオフショア開発ですが、成果物のレベルが低いと意味がありません。
ベトナムやインドでは国をあげてIT教育に力を入れている上に、アメリカやヨーロッパといった最先端なIT技術を扱うオフショア開発にも積極的に参加しているため、オフショアでの安価な開発であってもクオリティの高い成果物を得ることができます。
*経済産業省より
4. オフショア開発のメリット
開発コスト削減
日本で勤務している日本人エンジニアの平均月収は35~40万円程度ですが、ベトナム人エンジニアの平均月収は20~30万円程度なので、日本と比べるとかなり安価となっています。
給料が低いということは、それだけ人件費も低くなるので、開発コストを抑えることができます。
システム開発を中長期で行えば行うほど人件費の差は大きくなるので、開発期間が長いほどこのメリットが最大化します。
IT人材の確保
3章のオフショア開発が注目される理由でも述べましたが、日本国内では現在IT技術者の需要に対して供給が追いついていない状況となっており、今後さらに需要過多になると言われています。
国内でのIT技術者の確保は困難になってきていますが、オフショア開発でのIT技術者は確保しやすいです。
ラボ型開発に強い
オフショア開発では基本的に中長期を想定したラボ型開発*での契約を主としています。
短期間での請負契約ではコストメリットは薄れるかもしれませんが、中長期なラボ型開発であれば、固定した人員の確保やコスト面でのメリットが得られます。
*ラボ型開発とは、半年から1年間程度顧客の専用チームを用意し開発を行う契約形態のこと
5. オフショア開発のデメリット
意思疎通が難しい
海外の方と交流することになるため、国によっては時差や物理的な距離があります。
また、言語や文化ももちろん異なります。
そのため、ミーティングや緊急の対応依頼が困難であったり、仕様や品質についての認識がズレてしまうことがあります。
しかし、時差に関しては利用することも可能です。
日本企業の一般的なオフショア開発先であるアジア各国とは2~3時間程度の時差があります。
日本とオフショア開発現地が共に働いている時間にコミュニケーションを取っておくことで、日本の稼働終了時間からさらに2~3時間現地で稼働してもらうことができるため、効率的な開発体制にすることができます。
進捗状況の管理が難しい
日本であれば、基本的に納期通りに納入したり、仕様書に沿った成果物を納品するのが当たり前ですが、海外企業はそれが当たり前ではない場合があります。
そのため、定期的に進捗状況を確認し、品質や納期の確認・管理をする必要があります。
管理をゆるくしてしまうと、納期直前で仕様書と違う成果物だと判明してしまったり、納品の遅延が発覚してしまう可能性があります。
さいごに
今回は、IT技術者不足を解消できる「オフショア開発」についてご紹介いたしました。
時差や言語の差によるコミュニケーション難易度が少し高くなってしまうことや、進捗・品質管理が少し大変であったりと注意点はいくつかありますが、コストや高度なIT技術者確保にはとても有効です。
短期間での開発であれば自社または国内で完結させた方がコスト面では良いかもしれませんが、中長期での開発が見込まれる場合には、オフショア開発を検討してみてはいかがでしょうか?