デジタル時代の進展とともに、テキストデータの量は爆発的に増加しています。
日々生成される大量のデータを、企業や個人がどのように活用するかが重要な課題となっています。
この課題の鍵となるのが「自然言語処理(NLP)」です。
本記事では、NLPの基本的なことから、活用例、NLPの未来展望までを詳しく解説します。
自然言語処理(NLP)とは
自然言語処理と言われることもある「NLP」とは、人間が日常的に使っている自然言語をコンピュータに処理させる一連の技術です。
この技術を応用することで、「機械翻訳」や、大量のテキストデータを処理して有益な情報のみを取得する「テキストマイニング」などへとつながります。
簡単に言うと、曖昧さが含まれる人間の言語に対して、言葉の解釈を1つに絞り、コンピュータに「ことば」を教えることです。
自然言語と人工言語
自然言語とは、日本語や英語など人間が日常的に使う言葉のことです。
人と人がコミュニケーションを取るために日常的に使われ、文化的な側面を持ちながら自然に発展してきたため、自然言語と呼ばれています。
人工言語とは、人為的に作られた言語のことです。
たとえば、プログラミング言語を含むコンピュータ言語やHTMLやCSSといったWebサイトに使用されるマークアップ言語、数式が人工言語に含まれます。
NLPが注目される理由
テキストデータの増加
1つ目は「テキストデータの増加」です。
近年、スマートフォンやインターネットから情報を取得する機会が爆発的に増えています。
趣味の範囲ではなく、ビジネス分野においてもインターネット検索から情報を得ることが当たり前になりました。
また、個人だけでなく、企業内においても自社アンケートや問い合わせログなどのデータが大量に蓄積されています。
さらに、企業内でSlackやLINE WORKSといったビジネスチャットツールを導入している企業も増え、紙でのデータ保管からデジタルでのデータ保管に変わってきています。
自然言語処理の技術を使ってSNS投稿などのテキストデータを解析すれば、消費者の関心やニーズを把握できるなど、情報が電子的にすぐに手に入るようになった今、NLPが活用できるのではないかと期待されています。
DX需要の増加
2つ目は「DX需要の増加」です。
近年、業務効率化や社内改革といったDXの需要が非常に高まっており、この業務効率化につなげるためにNLPが活用できるのではないかと注目されています。
汎用言語モデルの進化
3つ目は「汎用言語モデルの進化」です。
現在、言語処理研究開発において、Googleの「BERT」やOpenAIの「GPT-4」といった汎用言語モデルの研究が猛スピードで進められています。
汎用言語モデルの活用にはNLPは不可欠であり、この汎用言語モデルの著しい進化に伴って、NLPにも注目が集まっています。
NLPの仕組み
1:形態素分解
まずは「形態素分解」です。
形態素分解とは、文章を単語に分解していく作業です。
日本語は、英語のように単語と単語が明確に別れていないため、文章を単語ごとに分割する必要があります。
たとえば「彼は妻とカレーを食べた」という文章であれば、「彼(主語)」「は(助詞)」「妻(名詞)」「と(助詞)」「カレー(名詞)」「を(助詞)」「食べ(動詞)」「た(助詞)」と分解することができます。
2:構文解析
次に「構文解析」です。
構文解析とは、単語同士の関係性を解析する作業で、主語・述語関係などを分析して、文の構造を明確にします。
たとえば「彼は妻とカレーを食べた」という文章であれば、主語は「彼は」、述語は「食べた」となり、「彼は妻とカレーを」は名詞句、「食べた」は動詞句となります。
3:意味解析
3つ目は「意味解析」です。
意味解析とは、「辞書」に基づいた意味を利用し、正しい文を解析することです。
「彼は妻とカレーを食べた」という文は、彼が「妻とカレー」の両方を食べたのか、「カレー」だけを食べたのかわかりません。
普通私たちは、人間が人間を食べることはないと理解しているため、妻を食べるわけないとわかりますが、コンピュータはわかりません。
機械可読辞書*やコーパス**を活用することで、コンピュータでも「食べた」と「妻」の関係性がないことが理解できるようになります。
*機械可読辞書とは、コンピューターが読み取り、処理できる形式で記述された辞書のこと。
**コーパスとは、自然言語の文章や使い方を大規模に収集し、コンピュータで検索できるよう整理されたデータベースのこと。
4:文脈解析
さいご4つ目は「文脈解析」です。
文脈解析とは、複数の文章に形態素解析と意味解析を行い、文同士の関係性を解析することです。
たとえば、「彼は妻とカレーを食べた。それはとても辛かった。」という文章であれば、前半部分は意味解析まででコンピュータが理解できるとわかりました。
では、後半部分の「それは辛かった」の「それ」を「カレー」だとどうコンピュータに認識させるのでしょうか。
複文では、お互いの関係性を正しく解析する必要があり、今まで利用していた「機械可読辞書」や「コーパス」の領域を超えて、「知識」を機械に学習させる必要が出てきます。
現状では、まだ完璧な文脈解析は確立されていませんが、照応解析*が方法の1つとしてあります。
*照応解析は代名詞や指示詞などの指示対象を推定したり、省略された名詞句を補完し処理する解析のこと。
NLPでできること
翻訳
まず1つ目は「翻訳」です。
Google翻訳などの機械翻訳も、自然言語処理技術の代表的な例の1つです。
AI技術の進化によってニューラル翻訳*が可能になった現在、翻訳の精度は飛躍的に進化しています。
単語を1つ1つ翻訳していくのではなく、文章をまとまりと判断し、訳文を当てるため、違和感のない翻訳を実現できます。
*ニューラル機械翻訳 (NMT) とは、単語をある言語から別の言語に翻訳するために使用されるアルゴリズムのこと。
テキストマイニング
2つ目は「テキストマイニング」です。
テキストマイニングとは、SNS投稿やWebページなどの大量のテキストデータを分析し、有益な情報を入手することです。
形態素解析でテキストを単語に分割し、各単語の出現頻度などを分析します。
テキストマイニングを利用すると、企業が把握しにくいユーザーの生の声を発見できるため、マーケティング分野での活用が期待されています。
予測変換
3つ目は「予測変換」です。
皆さんご存知かもしれませんが、予測変換とは、スマートフォンなどのデバイスに文字を入力すると、自動的に次の候補となる単語が提供される機能です。
この機能にも自然言語処理が使われており、入力履歴や機械可読辞書を参考に、候補となる単語を導いています。
NLPの活用事例
対話型AIチャットボット
チャットボットと呼ばれている対話システムは、NLPを用いたサービスの1つです。
入力された文の意味を的確に理解し、最適な回答を文章化する際に、NLPが用いられています。
日本語では、主語が抜けただけで意味が大きく変わってしまうことがあります。
チャットボットでは直前の会話に出てきた主語を記録し、その後のコミュニケーションに活かすなどの仕組みがあります。
スマートスピーカー
さまざまなことを指示できる、AlexaやSiriといったスマートスピーカーもNLPが活用されています。
スマートスピーカーに指示を出せば、指示された自然言語を的確に解釈し、指示通りの操作を実行することができます。
また、NLP技術は、ユーザの音声を変換したテキストからユーザが求めるアプリを推測するのにも使われています。
NLPによって、数多くあるアプリの中から、ユーザが求める最適な機能を提供してくれます。
さいごに
今回は、NLP(自然言語処理)についてご紹介いたしました。
NLPは、日常生活やビジネスにおいて、ますます重要な役割を果たしています。
多様なアプリケーションによって、テキストデータからの情報抽出や意思疎通の効率化が可能になり、その応用範囲は広がる一方です。
この技術の進化に伴い、機械が人間の言語をより深く理解し、より自然に対話できるようになることで、コミュニケーションの形は大きく変わっていくかもしれません。
NLPのさらなる進展に期待しつつ、その発展がもたらす新たな可能性を楽しみにしていきましょう。
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