ISIT

【開発秘話】マルチベンダーの壁と運用体制変更の危機。波乱のSaaS刷新から事業急成長を導いた「全体最適の伴走力」

  • プロジェクトの裏側
  • DXのリアル

新規SaaS事業の立ち上げや大規模なシステム刷新は、決して綺麗な設計図通りには進みません。本記事では、年商100億円に迫る物流コンサルティング企業が直面した「終わらない要件変更」「マルチベンダー間の結合の壁」「運用体制の過渡期」という泥臭い現実に対し、アイ・エス・アイソフトウェアー(ISI)がどのように全体最適の視点を持って伴走し、150社以上の大手企業に導入される成長事業へと導いたのか、そのリアルな軌跡を紐解きます。

ひと目でわかる!本プロジェクトにおける課題と解決の全体像

項目 直面した壁(Before) ISIの「越境型アプローチ」(After)
要件と開発 要件変更による手戻り、詳細設計なしでの大混乱 仕様把握者とPGの間に立ち、プロトタイプで認識を統一
データ移行 複雑なデータ構造による移行エラーと手戻り 業務ロジックから逆算し、移行トリガーと手順を再定義
ベンダー連携 別ベンダー(フロント側)のバグで結合テストが停滞 バックエンド視点で仕様・バグ特定まで踏み込み品質を担保
運用体制 顧客社内の体制変更によるインフラ運用知見の空洞化 ISIのノウハウを活かし、インフラ領域を含めた包括体制を構築

事業の急成長に伴うシステム刷新のジレンマ

今回のお客様は、ロジスティクス領域における深い知見を持ち、独自の「サプライチェーン最適化SaaS」を市場に展開している気鋭のコンサルティング企業です。事業が急成長し、クライアントからの要望が高度化する中で、旧システムのままでは機能拡張に限界が生じており、大規模なシステムリプレースという大きな挑戦に踏み切られました。

しかし、市場のニーズに機敏に応えようとするあまり、プロジェクトは高いハードルに直面します。

常に進化する要件とスピードのトレードオフ
現場の声を即座にサービスへ反映させるため、要件定義書が作成された後もアジャイル的に仕様変更が繰り返されました。スピードを優先して詳細設計を省き、仕様把握者が直接プログラマー(PG)に意図を伝える手法をとりましたが、開発規模が大きくなるにつれ認識の齟齬が生じ、品質のコントロールが難航、スケジュールは大幅に遅延していました。
複雑極まるデータ移行
長年蓄積された在庫の推移や配送ルートに関わる膨大かつ複雑なデータを、新たなアーキテクチャへ移行するための要件は非常に難易度が高く、移行設計の甘さからやり直しが多発する泥沼状態に陥っていました。

顧客は「日々動いている物流ビジネスを止めずに、いかにシステムを次世代化するか」という、前例のない複雑な壁に挑まれていたのです。

混迷のリプレースを軌道に乗せた、ISIの「泥臭い交通整理」

スケジュールが遅延し、品質不備と移行のやり直しが多発する緊迫した状況の中、ISIはプロジェクトの立て直しに向け、体制を刷新。新たな担当SEを中心に、泥臭い「交通整理」を開始しました。

「設計書なし」の製造現場に、認識の物差しを入れる

詳細設計なしで製造が進み、仕様把握者と多くのプログラマー(PG)間で認識齟齬が多発していた現場に対し、私たちは単に「仕様書を書き直してください」と正論を吐くことはしませんでした。それでは時間がいくらあっても足りないからです。 ISIのSEが仕様把握者の意図を咀嚼し、開発チームとの間に立って「口頭伝達の隙間を埋めるミニマムな共通言語(プロトタイプやIF定義)」をその都度構築。仕様把握者が管理しきれなくなっていた複数のプログラマーのハブとなり、認識のズレをその場で潰していくことで、製造品質を劇的に向上させました。

泥沼化したデータ移行設計の再定義

やり直しが多発していたデータ移行に対しては、既存システムのデータ構造と業務ロジックをISIが改めて深く解析しました。単なるデータの右から左への流し込みではなく、「新システムでこのデータはどう活きるべきか」という逆算の視点から、移行のトリガーと手順を実態に合わせて再定義。不整合を一つひとつ手作業で潰すような地道な検証を重ねることで、移行の設計をクリアし、リプレースを無事成功へと導いたのです。

この「リプレース時の徹底的な立て直し」があったからこそ、お客様からも「ISIの担当SEが変わってから、プロジェクトが本格的に動き始めた」という絶対的な信頼をいただけるようになり、現在の安定した保守・機能追加フェーズへと繋がっています。

「言われた通り」を捨てる。全体最適を見据えた逆提案

リプレース完了後、プロジェクトは機能追加を伴う保守フェーズへと移行します。ここでもISIは、「与えられた要件だけを満たせばいい」というスタンスは一切取りませんでした。

「機能追加の際、システム全体への影響を先回りして指摘する」

これが、私たちが徹底したアプローチです。
お客様がSaaSの販促活動を強化するために次々と新規機能のアイデアを出される中、私たちは単にコードを書くのではなく、システム全体の設計図を俯瞰しました。

「そのトラッキング機能を追加すると、既存の自動発注フローのデータ処理と整合性が取れなくなるリスクがあります。代わりに、こちらのデータ構造を活用したアプローチはいかがでしょうか?」

当初の要望をそのまま鵜呑みにするのではなく、ビジネス要件を満たしつつシステムの負債を作らない「アイデアベースの逆提案」を繰り返すことで、要件定義段階での手戻りを防ぎ、強固なシステム基盤をさらに進化させていきました。

全体を見渡す柔軟性:マルチベンダーの壁とインフラ危機をどう乗り越えたか

開発が安定してからも、現場はトラブルの連続でした。その中でアイ・エス・アイソフトウェアーが発揮したのは、「自分たちの開発領域」という枠にとどまらず、システム全体を成功に導くための当事者意識と柔軟な提案力です。

結合テストで立ちはだかった「マルチベンダー特有の壁」

本プロジェクトでは、フロントエンド(現場担当者が操作するダッシュボード画面など)の開発を別の開発会社が担当するマルチベンダー体制が敷かれていました。私たちがバックエンドのAPIを構築し、いざフロントと結合しようとした際、フロント側の仕様の曖昧さや不具合が多発し、全く疎通確認が取れないという事態に陥りました。

通常であれば「フロント側の修正待ち」とプロジェクトが停滞する場面ですが、それではお客様のビジネスに影響が出ます。私たちはイニシアチブを握り、バックエンドの視点からフロントエンドとの結合部分における仕様やバグの特定を積極的にサポートし、具体的な改善提案と品質管理をリードしました。システム全体の品質を担保しにいく能動的な対応が、プロジェクトを前に進める大きな原動力となりました。

保守フェーズで直面したインフラ運用体制の過渡期という危機

さらにその後、お客様社内での体制変更に伴い、システムインフラの運用リソースが一時的に手薄になるという事態が発生します。お客様内部でのインフラ知見が空洞化し、今後の安定稼働や急ピッチなサービス拡張に不安が残る状況でした。

私たちは即座に動きました。ISIが長年培ってきたインフラ構築・運用の実績を活かし、「お客様のインフラ領域を含めた包括的なご支援体制」を新たに構築・提案したのです。これにより、運用の停滞を防ぎ、お客様が安心してビジネスの成長に専念できる環境を維持しました。

堅牢な基盤がもたらしたビジネスへのインパクト

これらの泥臭いハードルをすべて越え、刷新されたシステムは現在、安定稼働と継続的な機能拡張のフェーズに入っています。

ISIの技術とスタンスは、お客様の経営に明確なインパクトをもたらしました。

販促を加速させる拡張性の獲得
お客様からは「基盤のシステムがしっかりしているからこそ、攻めの拡張機能を迅速に追加でき、それが直接的な販促・売上につながっている」という高い評価をいただいています。
エンタープライズ市場でのシェア拡大
2026年5月現在、本SaaSの利用企業は150社を突破し、その多くが厳格な要件を求める大手企業様です。堅牢なシステム基盤が、サービスへの信頼性を裏付けています。
事業成長を加速させる強力なエンジンへ昇華
開発の効率化と機能拡張によるビジネスの成長が実を結び、現在では事業規模が当初の想定を上回るスピードで拡大しています。システム投資が「単なるコスト」ではなく、しっかりと事業の成長を生み出す「価値」へと転換された瞬間です。

【FAQ】本プロジェクトから紐解く、大規模システム刷新の成功法則

同様のプロジェクトで直面しやすい課題について、本事例の知見をもとに回答します。

Q. 要件定義完了後も仕様変更が相次ぐ場合、どう品質を担保すべきか?
完璧な設計書を後から作り直すのは非現実的です。仕様把握者と開発現場の間に「プロトタイプ」や「ミニマムなIF定義」といった共通言語をハブとして挟み、認識のズレをその場で細かく潰していくアプローチが有効です。
Q. マルチベンダー開発で結合テストが失敗・停滞する原因と対策は?
「フロント側」「バックエンド側」それぞれの仕様認識のズレと責任境界線の押し付け合いが主な原因です。自社のスコープ(領域)に固執せず、全体最適の視点で相手側のバグ特定や仕様のすり合わせまで踏み込む「越境的なリード」が必要不可欠です。
Q. 複雑なシステムのデータ移行で気をつけるべきポイントは?
旧データを単純に流し込むだけでは必ず破綻します。新システムで「そのデータがどう活用されるか(業務ロジック)」から逆算し、実態に合わせて移行のトリガーと手順を再定義する泥臭い設計作業が成功の鍵を握ります。

プロジェクトマネージャーからのメッセージ

担当プロジェクトマネージャー プロフィール
大規模システム刷新・エンタープライズ向けSaaS開発歴15年以上。インフラ領域からバックエンド構築、マルチベンダー管理まで横断的な知見を持ち、技術とビジネスの双方を俯瞰する「IT参謀」として多数のプロジェクトを牽引。
「要件が目まぐるしく変わる中、いかにしてお客様の『やりたいこと(ビジネスの熱量)』を『破綻しないシステム』に落とし込むか。リプレース初期の交通整理から、別ベンダーとの連携強化、新たな運用体制の構築まで、本当に想定外の連続でした。しかし、『システム全体最適の視点』を持たなければ、絶対にお客様の事業成長には追いつけません。我々が技術の専門家として、常に先を見据えながら泥臭く伴走した結果、事業が大きくスケールし、多くのお客様に価値を届けていると伺った時は、自分のことのように嬉しかったですね。これからも、お客様のビジネスを止めない『攻めのITパートナー』であり続けたいと思います。」

「何から手を付ければいいか分からない」「まだフワッとした構想しかない」といったライトなご相談でも大歓迎です。どんな些細なお悩みでも、自社に最適な形へと落とし込んでくれるアイ・エス・アイソフトウェアーに、ぜひ相談してみてください。