システムの導入やリプレースを行う際に、どのSIer・ベンダーにどのシステムをお願いするか悩む場面が出てきます。
そういった際に有効なのが、「RFP」です。
RFPは自社がシステムを刷新しようと考えた背景などをSIerやベンダーに提示し、提案をお願いするものです。
今回は、そんなRFPについて基本的なことから、RFIとの違い、RFP作成時のポイントなどをご紹介いたします。
RFPとは「Request for Proposal」の略で、日本語では「提案依頼書」と言います。
企業がITシステムの導入やリプレースを行うにあたり、発注先を選定するため、候補となるシステム開発会社に具体的な提案を依頼する文書です。
システムの目的や概要、要件や制約条件などが記述されています。
一般的にPowerPointやWordで作成される事が多く、数ページで完結しているものから数百ページに渡って書かれるものもあります。
検討しているシステムの大きさにもよりRFPのボリュームは異なりますが、内容に関しては、「何を・いくらで・いつまでに」実現したいかという要求が共通して書かれます。
RFIで得た情報を元に目星をつけた企業へ要件を提示します。
RFPを作成する目的は、発注する企業がSIerやベンダーに対して、自社の課題や実現したいこと、開発に必要な要件を正確に伝えることです。
RFPを通して、必要な情報を抜け漏れなく開示することで、SIerやベンダーから最適な提案を受けることができるようになります。
また、お互いの認識を統一させることで不必要なやりとりを減らすことができ、その後の開発もスムーズに進みます。
RFPと似た言葉にRFIがあります。
RFIとは「Request for Information」の頭文字を取ったもので、日本語では「情報提供依頼書」と言われています。
RFIは、製品やサービスの情報を幅広く収集するため、SIerやベンダーに対して情報の提供を依頼するものです。
一方RFPは、提案の範囲や提案の元になる要件、制約条件が明確化され、SIerやベンダーに対して具体的な提案を依頼するものです。
プロジェクト開始時などにRFIをベンダー10社ほどに送付し、各社からの回答を受けて3・4社に絞り込み、RFPを絞り込んだ企業に提出するのが一般的な流れです。
1つ目は、複数の依頼先からの提案を比較しやすいことです。
発注前の段階で、RFPを複数のSIerやベンダーへ提出することができます。
複数のSIerやベンダーから全く同じ要件で提案書をもらえるため、評価する際の基準を統一しやすくなり、各提案の比較を容易に行うことができます。
RFPを提出しないと、評価の基準が上手くまとまらず提案に差が出てしまうため、SIerやベンダーを選定するのが難しくなってしまします。
2つ目は、SIerやベンダーに要件が適切に伝わることです。
RFPが持つ最大のメリットといっても過言ではないのがこのメリットです。
自社が求める要望を要件定義としてまとめ、SIerやベンダーに適切に伝えることで認識の齟齬を防ぐことができます。
RFPを提出しないと要件に抜け漏れが発生したり、正しい内容が伝わらないことがあります。
SIerやベンダーから要件定義とズレた提案が行われた結果、説明や訂正に無駄な時間がかかってしまいます。
認識の齟齬を防止するために、しっかりと要件を記したRFPの提出が必要になります。
3つ目は、トラブルを防止できることです。
RFPによって要件を明確に資料化しておくことで、トラブルの発生を未然に防げます。
システム開発では、曖昧な要望や口約束のせいで「元々知らされていた納期と異なる」や「予算と開発規模が合わない」といったトラブルがしばしば発生します。
依頼企業とSIerやベンダー間で「言った・言わない」論争が発生し、収集がつかなくなることもあります。
RFPはこうした納期や見積もり、開発規模に関するトラブルを防ぐのに役立ちます。
まず1つ目は、システムを導入・リプレースしようと考える目的です。
なぜこのシステムを導入したいのか、プロジェクトのゴールはどこなのかを記載します。
2つ目は、プロジェクトの背景です。
課題や悩みなど、システムを導入・リプレースすることになった背景を提示します。
3つ目はゴールです。
求める納期や費用、品質などできるだけ具体化できる項目をプロジェクトのゴールに設します。
たとえば納期の項目であれば、「◯月◯日までに問題なくシステムが稼働していること」、品質の項目であれば、「現状の課題がすべて解決されていること」など、定量的なゴールを提示しましょう。
4つ目は会社情報です。
自社の基本情報はもちろん、取り扱い製品や業種、販売の形態などの情報も記載します。
自社の会社紹介パンフレットなどがあれば、同時に提出するとよりSIerやベンダーに会社の情報が伝わります。
5つ目は、現行のシステム構成です。
現在使用しているシステムの構成図や、システムパッケージを説明します。
構成図の作成が困難な場合は、システムパッケージ名をすべて記載しましょう。
さいご6つ目は、現行の機器情報です。
自社で現在使用しているPCやサーバの情報を説明します。
システムにより、推奨される環境やスペックが変わってくるため、使用しているPCやサーバの情報はしっかりと記載しましょう。
解決したい課題が曖昧で「◯◯したい」というようなただの要望になってしまうことは避けます。
なぜシステムの導入・リプレースの話が持ち上がり、今回依頼することになったのか、現状の課題はなにがあるのか、そのプロジェクトが終了する時に自社がどうなっていたいのかなどを簡潔にまとめます。
「課題(As Is)」と「あるべき理想像(To Be)」を伝えることが重要です。
文章で説明するのが困難な場合は、BeforeとAfterに分けた画像を添付するのも効果的です。
要求事項を具体的かつ簡潔にまとめます。
それにより、SIerやベンダーがプロジェクトのニーズを正確に把握できるようになり、適切な提案のみを集められるようになります。また、最終的な成果物の品質の向上も見込めます。
プロジェクトを進めるスケジュール感や予算を明確に記載します。
スケジュール感が曖昧だと、SIerやベンダーはプロジェクト体制や見積もりを出しにくくなってしまいます。
予算を提示する際には、マストで解決したい課題を厳選して伝えると、予算に合う提案が返ってきやすいです。
また、たとえば以下のように、松竹梅の提案をお願いしてみるのも効果的です。
今回は、RFPについてご紹介いたしました。
RFPとは、企業がITシステムの導入やリプレースを行うにあたり、発注先を選定するため候補となるシステム開発会社に具体的な提案を依頼する文書のことで、プロジェクトの規模によってボリュームが変わってきますが、内容は「何を・いくらで・いつまでに」が共通して書かれています。
自社の現状やシステム導入・リプレースにより解決したい課題や目的、利用予定者、予算、納期などを詳細に記載することで、SIerやベンダーとの認識の齟齬を無くすことができます。
また、口約束ではなく文書化されているため、トラブル回避にもつながります。
RFIに比べ、RFPではより詳細な情報を記載する必要があるため、作成に手間はかかってしまいますが、システムの導入・リプレースを成功に導くためには必要になるものです。
RFPを作成する際には、本記事でご紹介したポイントを参考にしていただければ幸いです。