医療分野でのAI(人工知能)の進化は、医師の負担軽減、診断精度の向上、コスト削減といった数多くのメリットをもたらしています。
この記事では、医療AIの概要から具体的な活用例、将来性に至るまでを詳しく解説し、医療AIの今とこれからを考えていきます。
医療AIとは、AI(人工知能)によって医療の質の向上を目指した取り組みのことで、医薬品開発や介護など、活用領域は多岐にわたります。
医療技術の発達で診断する医師の仕事は増えている一方で、医師の数は増えないため、作業の効率化が課題となっています。
そこで、診断の質を高めつつ医師の負担を軽減するために導入された技術のひとつが、AIです。
厚生労働省が「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」で発表している、AIが活用できると期待されている分野は以下の6つです。
上記6つのうち、もっとも活用されているのが「画像診断支援」です。
画像診断支援には使用タイミングが3種類あります。
まず1つ目は、「医師が見る前」にAIが判断する場合です。
医師よりAIが先に判別することにより、医師はより難しい症例に注力することができ、AIとの役割分担を行うことで、医師の負担軽減が期待できます。
2つ目は、「医師が見た後」にAIが判断する場合です。簡単に言うと、AIがダブルチェックを行うイメージです。
単独で判断しなければならない場合の精神面へのサポートや、重大な見逃しの減少に期待が寄せられています。
さいご3つ目は、「医師とAIが同時に見る」場合です。
AIがリアルタイムに医師をサポートしながら提案することで、医師にはない新たな気づきが見つかり、見逃しの軽減につながるのではないかと期待されています。
*ゲノム医療とは、遺伝や遺伝子が関与するさまざまな病気や問題について、悩みや心配がある方々に、遺伝学の知識とゲノム情報をもとに適切な医療と情報を提供すること。
まずは、「ヒューマンエラーの防止」です。
AIは豊富な医学データと最新の研究結果をもとに、医師の診断と治療の意思決定サポートをします。
例えばAIは、薬に対しての適切な投与量や薬物間の相互作用に関する情報を提供することができます。
これにより、医師は最適な治療法や診断を即座に把握することができ、誤った診断や判断といった人的ミスを防ぐことができます。
2つ目は、「医師・看護師の負担軽減」です。
AIで医療スタッフの定型業務を自動化することで、医師や看護師の負担が軽減されます。
その結果、多くの時間を患者に費やすことができるようになるため、患者へのケアの質が向上します。
3つ目は、「コスト削減・業務効率化」です。
医療AIは、X線やCT、MRIなどの医療における画像の解析や、患者の電子カルテの情報抽出などができます。
AIを導入することで、業務効率化が進み診療の待ち時間を減少させることができ、また、医療機関の運用コストの削減につながります。
4つ目は、「病気の早期発見」です。
AIは膨大な情報の中からデータを分類・分析することができます。
AIは、医者でも見つけられないような小さな異常パターンやリスク因子を検出することができるため、病気の早期発見につながります。
早期発見や早期治療が可能になると、患者の生存率が大きく向上します。
5つ目は、「医療体制の維持」です。
AIは言うまでもなく、人間とは違い、24時間365日いつでも稼働可能です。そのため、非常事態や緊急のケースに対応できるようになります。
まず1つ目は、「AIへの信頼性の担保」です。
AIの診断結果はアルゴリズムと学習データに基づいています。
学習データが不十分だった場合、診断結果にエラーが発生する可能性があります。
また、AIはブラックボックスな部分があり、内部の動作や意思決定プロセスは外部から確認することができないため、診断結果の信頼性の評価や説明が難しくなる場合があります。
十分で適切な学習データの準備と、AIの信頼性を担保するための監視が必要です。
2つ目は、「プライバシーの保護」です。
AIを導入すると、患者の名前や住所、診療履歴などの個人情報がオンラインで取り扱われることが増加します。
そのため、データのプライバシーの保護とセキュリティ対策が非常に重要となります。
患者一人ひとりのプライバシーを守るために、データへのアクセスを許可する医療スタッフを制限したり、データの保管期間を明確にすることも重要です。
AIの開発やカスタマイズ、導入、維持には高度な技術と専門知識が必要なため、コストがかかります。
また、AI技術含む医療技術は常に進化しているため、維持だけではなくバージョンアップが必要となります。
導入コストはもちろん、AIを活用し続けるためのランニングコストも発生することに注意が必要です。
AIは大量のデータからパターンを抽出し、あくまでも一般的な判断を提供するため、AIが下した診断を鵜呑みにするのは大変危険です。
最終的な診断や治療の計画は、専門的知識を十分に持った医師や看護師などが判断します。
あくまでも「AIは診断の補助として活用する」という認識を忘れずに持っておきましょう。
自然言語処理技術(NLP)*を活用することで、AIは患者のカルテを自動的に解析し、病歴や病状の情報を抽出することができます。
これにより、医師や看護師はより効率的に患者の情報を把握できます。
*自然言語処理技術(NLP)とは、人間が日常的に使っている自然言語をコンピュータに処理させる一連の技術のこと。
医療におけるAIは、レントゲンやMRIなどの画像解析においても高い精度を発揮し、がんや骨折、肺疾患などを発見することができます。
大量の患者データを学習しているAIだからこそ、小さな異常にも気付くことができます。
医療器具にAIを組み込むことで、患者のモニタリングや診断の精度が向上します。
たとえば、心電図モニターにAIを統合すると、心房細動の早期発見が可能になります。
パソコンや電子カルテが次々と普及したように、医療分野におけるAIも気がつけば当たり前に使われるようになっているかもしれません。
医療AIは、医療現場の効率を上げるための道具として、国内外の医師の負担軽減に寄与することが期待されています。
AIの精度向上や新たなアプリケーションの開発により、治療の質の向上や病気の早期発見、遠隔での治療に貢献するでしょう。
しかし、医療AIがどれだけ便利になったとしても、治療の最終的な決定権がAIになることはないと言われています。
医療スタッフが効率を上げられるようにするための補助として、医療AIが存在するということを認識しておいてください。
医療AIは診断支援、治療プロセスの最適化、医療コストの削減など、多方面にわたるメリットを提供し続けています。
これからも技術の精度向上や新しいアプリケーションの開発により、更なる医療の質の向上が期待されます。
ただし、AIが医療現場で活躍するためには、適切な監視体制と継続的な評価が必要であり、その実装には倫理的な配慮と共に、人間の医療スタッフとの連携が不可欠です。
人が行うべき箇所、AIに任せる箇所をしっかりと判断し、医療分野でのDXを推進していきましょう。