ISIT | アイ・エス・アイソフトウェアーがお届けするIT通信

倉庫DXとは?実現に向けたポイントや注意点を解説

物流業界では、世の中の変化に合わせ、商品管理や出荷など倉庫内における業務プロセスのデジタル化や自動化といった「倉庫DX」の取り組みが広がっています。とはいえ、ひとことで倉庫DXといっても様々な施策があるため、何から取り組むべきか分からない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、倉庫DXの必要性や、基本概念、利用されている技術など具体的な取り組み例を解説します。
また、倉庫DXを実現するために注意しておきたいポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

倉庫DXとは?

倉庫DXは、IoT、AI、ロボティクス、ビッグデータなどに代表される最新のデジタル技術を活用し、倉庫内の情報収集、処理、管理などの倉庫業務をデジタル化・自動化することで、倉庫業務の生産性向上や効率化を推進する施策です。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の定義
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

参考:総務省HP「デジタル・トランスフォーメーションの定義

倉庫DXはなぜ必要?

倉庫DXが必要とされている要因は様々です。例えば、物流業界の抱える大きな問題のひとつである「慢性的な人材不足」の解決策の一環として倉庫業務の自動化が進められています。
また、EC市場の成長にともない複雑化する倉庫業務の効率化の取り組みとして、DXが求められています。

倉庫における適切な在庫管理は、保管スペースの最適化やニーズに応じた在庫調整の実現など業務品質の改善に寄与します。また、重量物を扱う倉庫では落下などの事故防止や、作業スタッフの安全性の確保にもつながります。

そのため、適切な管理・運営を可能にする倉庫DXの施策は、物流業務の改善という観点からも非常に効果的で重要な施策と言えます。

倉庫DXの取り組み例

倉庫DXにはさまざまな施策がありますが、ここでは代表的な取り組み例をご紹介します。

倉庫管理システム(WMS)

倉庫管理システム(WMS)*は入出庫やロケーション管理、在庫管理を行うためのシステムで、倉庫内の業務を最適化し省人化を実現します。

商品の情報や状況をバーコードなどのデジタルデータでリアルタイムで共有・管理できるため、アナログ方式で在庫管理する必要がなく、記入間違いや、ピッキングミスなどの人為的ミスを削減できます。業務の効率化が期待できる倉庫DXの代表的な取り組みのひとつです。

*WMSについてはこちらの「もう倉庫内業務を手作業でしない!物流に欠かせないWMSとは」をご覧ください。

倉庫運用管理システム(WES)

倉庫運用管理システム(WES)は、前述したWMSの機能に倉庫内の制御機能を加えたものです。これにより、IoTデバイスやロボット、マテリアルハンドリング機器などの制御が可能になります。

自動倉庫システム(AS/RS)

自動倉庫システム(AS/RS)は、商品の保管や搬送、仕分けをコンピューター制御により完全自動化するシステムです。

商品の取り出しにスタッカークレーンやシャトルを使用するため入出庫業務の高速化が実現できます。また、人間のための通路や動線が不要で、商品を保管するラックを高層化できるので空間を余すこと無く使用でき保管効率を最大化できます。

さらに自動倉庫システムと倉庫管理システムを統合することで、在庫状況のデジタル管理が可能です。
ピッキングも自動化できるので、人為的ミスの削減、人件費削減による大幅なコストダウンが期待できます。

無人搬送車(AGV)

AGVは「無人搬送車」として知られ、商品の運搬を自動化する移動ロボットです。床に設置された磁気テープなどの誘導体に沿って走行するため、特定の経路を移動することが一般的です。

AMR(自律走行型ロボット)

AMRは「自律走行型ロボット」とも呼ばれ、自己位置推定や障害物回避などの技術を活用し自らが走行経路を算出して自動走行します。自己マッピング機能を備えており、倉庫のレイアウトに合わせて柔軟に運行経路を計算できるため、倉庫レイアウトがしやすく、多く導入されている移動ロボットです。

マテリアルハンドリング機器

マテリアルハンドリング機器(マテハン機器)は、搬送コンベアなど、荷役作業の効率を上げるための物流機器全般を指します。

搬送コンベアは一定の速度で断続的に商品を搬送でき物流倉庫では多く導入されています。一般的に水平搬送ではコンベアが、上下搬送では垂直搬送機などが用いられることが多いです。

さまざまなタイプのマテハン機器があり、荷役作業の効率化や労力削減を実現するために導入されています。

倉庫DX推進でおさえておきたいポイント

倉庫DXを成功させるには、いくつかのポイントをおさえる必要があります。

ビジョンの明確化

倉庫DXを導入する際は、はじめに自社のビジョンを明確にしましょう。現状の課題を正しく把握し、それに対し適切な解決策を導入できます。

DX人材の採用・教育

DXを確実に進めていくには専門人材の採用が不可欠です。自社内のナレッジが不足している場合、外部ベンダーに依存することも検討しなければなりません。

一方で、実際の運用フェーズでは、外部の人が把握しづらいポイントが出てくる可能性があるため、社内の人材が中心となり積極的にDXを推進することが重要です。

また、DX推進後に社員の役割や業務プロセスが大きく変わることもあるため、円滑な業務遂行には、既存社員の理解と協力が不可欠です。そのためには教育プログラムを導入し従業員の理解を深めることも大切です。

適用する技術の明確化

DXにおける技術は、すべての倉庫業務に一律に適用できるわけではありません。導入を検討しているシステム同士の連携についてや、機器やシステムの互換性を事前に把握しておく必要があります。それにより、DX技術の適用範囲を明確にし、最適な技術を選定することでDX実現を確実なものにしましょう。

DXの目的を意識

デジタル化は、あくまでも既存業務の課題解決のための「手段」です。単にシステムや機器など、ツールを導入して終わりではなく、そのツールが、本来の「目的」である実際の業務課題の解決にどの程度寄与するのかを常に意識し見極めることが重要です。

近年注目を浴びている倉庫DXの背景や、具体的な取り組みについて解説しました。

倉庫DXは、慢性的な人材不足やオペレーションの複雑化など、倉庫業務における様々な課題の解決手段として、これからの物流業界において大きな期待を集めています。

倉庫DXには管理システム、自動倉庫システム、搬送ロボット、マテハン機器など、数多くの施策や取り組みがあり、導入の際には、自社の状況に合った適切な手段を講じる必要があります。

そのため、導入目的の明確化や人材の確保・教育、各システム間の連携問題などを事前にしっかりと把握したうえで、業務課題を解決できるかを意識しながら判断し、進めるようにしましょう。