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【未経験領域への挑戦】年商50億規模の空間デザインファームが直面した「現場のIT拒絶」。システム刷新と合意形成のリアル

専門職の暗黙知に依存した業務フローをシステム化しようとした際、一般的なITツールでは現場に馴染まず、DX(デジタルトランスフォーメーション)が暗礁に乗り上げるケースは少なくありません。本記事では、年商50億円規模を誇る空間デザインファームが直面した「現場からのシステム拒絶」という泥臭い現実に対し、当該業界での開発経験が全くなかったアイ・エス・アイソフトウェアー(以下、ISI)がいかにして「先入観のない共創アイデア」と「NOと言わない柔軟性」で伴走し、全社的なデジタル基盤を構築したのか、そのリアルな軌跡を紐解きます。

ひと目でわかる!本プロジェクトにおける課題と解決の全体像

専門職の情熱と、現場が拒絶した「教科書通りのシステム」

今回のお客様は、商業施設やオフィスの高度な空間設計を手掛け、グループ連結で強固な経営基盤を持つ年商50億円規模の大手空間デザインファームです。

同社は、従来の平面的な設計手法から、3Dモデルや高解像度レンダリングを駆使した「次世代型デザインプロセス」へと移行を進めていました。しかし、アウトプットの質とスピードが向上した一方で、各デザイナーが個人の判断で大容量のファイルを管理していたため、最新データがどこにあるのか分からず、全体の進捗が不透明になるという課題を抱えていました。

現場に拒絶された過去のIT導入
この課題を解決するため、お客様は過去に「一般的なタスク・ファイル管理ツール」の導入を試みていました。しかし、日常的に美しさと機能性を追求するデザイナーたちにとって、事務的な業務システムのUI/UXは直感的ではなく、「これでは逆にクリエイティブの邪魔になる」と現場から猛反発を受け、利用が定着せずに頓挫してしまった過去があったのです。

「デザイナーの創作活動を止めず、かつ全社の資源管理を統制するシステムをどう構築するか」——お客様は、既存のITの常識だけでは測れない、複雑な壁に挑まれていました。

「業界未経験」だからこそ描けた、先入観のない共創のアイデア

過去のIT導入が頓挫し、社内に諦めムードが漂う中、ISIに白羽の矢が立ちました。実は、ISIにとって「空間デザイン・CAD領域」に特化した業務システムのスクラッチ開発は全くの未経験の領域でした。

しかし、私たちはこれを弱点ではなく、最大の武器と捉えました。「業界の常識」を知らないからこそ、知ったかぶりをせず、お客様のビジネスの根幹をフラットな視点で徹底的にヒアリングすることができたのです。

「正解のないデザイン」に、選択の物差しを入れる

デザイナーからの高いUI/UX要求に対し、手探りで画面設計を繰り返せば、プロジェクトは無限の修正ループに陥ります。そこで私たちは、一からデザインを押し付けるのではなく、「公開されているマテリアルデザイン(ver.3)のガイドラインを活用し、お客様ご自身に最適なコンポーネントを選択していただく」というアイデアを提案しました。

これにより、「好き・嫌い」という主観的な議論から脱却し、洗練されたUIを論理的に構築。空間デザイナーの方々にも納得いただける高い操作性を、無駄な手戻りなく実現しました。

リアルタイムで書き換える「生きた要件定義」

未知の業界特有の複雑な設計フローをシステムに落とし込む際、紙の仕様書を持ち帰って確認する従来の手法では必ず認識のズレが生じます。

私たちは、打ち合わせの場に業務フロー可視化ツールを持ち込み、未経験だからこそ生じる疑問をその場でぶつけ、お客様の目の前でフロー図を「リアルタイムに修正・更新」しながら議論を進めました。ブラックボックス化していた業務の全体像をその場でクリアにした上で、要件に沿ったプロトタイプをスピーディに構築。後日、実際の画面に触れていただきながら「そう、これがやりたかった!」という確固たる合意形成を積み上げていきました。

現場のリアル:「絶対にできない」と言わない柔軟性が突破口に

プロジェクトが開発フェーズに入ると、業界特有の文化やレガシー環境という「泥臭い現実」が次々と牙を剥きました。

「容量上限なし」という規格外の要求への対応

通常、システムを安定稼働させるためには、サーバーやアプリケーションに「取り扱い容量の上限」を設けるのがIT業界のセオリーです。しかしお客様からは「日々生み出される膨大な量の3Dレンダリングファイルの保存を止めるわけにはいかない。容量の上限は設けないでほしい」という強い要望がありました。

「それはシステムダウンのリスクがあるから出来ません」と突っぱねるのは簡単です。しかし、それではお客様のビジネスにブレーキをかけてしまいます。

ISIのエンジニアチームは即座に実現可能性を調査。結果として、アプリケーション・フレームワーク側の既存の上限値をあえて「無制限」に改修し、その代わりに外部の「監視アプリ」をシステムに併装・連動させるという柔軟なアプローチを採用しました。システムによる絶対的な制限で現場を縛るのではなく、監視の目を入れることで異常な負荷やリソース枯渇のリスクをコントロールし、ITのセオリーとお客様のビジネスの最適解を泥臭く導き出したのです。

「調査・実装・失敗・再調査」の泥臭いループ

さらに、お客様の既存環境(オンプレミスのファイルサーバや独自仕様のCADサーバ)への連携や、業界特有のデータ構造の紐解きは一筋縄ではいきませんでした。ドキュメント化されていない仕様も多く、一度実装しては想定外のエラーで失敗し、そこからログを解析して再調査する……という泥臭いサイクルを何度も繰り返しました。

未知の業界文化に対しても、「分かりません」と歩みを止めるのではなく、技術的な検証をもって必ず回答を持ち帰る。この「対話と技術の泥臭い往復」こそが、お客様との絶対的な信頼関係を築く鍵となりました。

属人化からの脱却。システムがもたらした経営へのインパクト

「デザイナーの視点」と「システム全体の最適化」を両立させた3Dアセット管理システムは無事稼働を開始し、お客様の設計現場に劇的な変化をもたらしました。

全社的な資源管理の統一化
各設計士が個人の判断でサイロ化して管理していたファイルがシステム上で一元管理され、「最新の3Dモデルはどこか」「誰がどの設計部分を担当しているか」が完全に可視化されました。
非生産的な作業コストの大幅削減
アナログ時代の名残であった煩雑なファイル引き継ぎや、データ探しの時間が消滅。作業コストが大幅に削減されたことで、デザイナーが「本来の設計・デザイン業務」にフルコミットできる環境が整い、プロジェクトの回転率と利益率の大幅な向上に直結しました。

単なる「ITツールの導入」ではなく、未経験の業界文化に真っ向から寄り添い、業務プロセスそのものを次世代化させたことで、企業の利益創出を直接的に加速させる強力な基盤へと昇華したのです。

【FAQ】本プロジェクトから紐解く、独自文化を持つ組織のDX成功法則

同種のプロジェクトで直面しやすい「特殊な業務環境におけるDXの課題」について、本事例の知見をもとに回答します。

Q. 現場の専門職(職人やクリエイターなど)のこだわりが強く、一般的な業務システムが定着しない場合はどうすべきか?
ベンダー側が「一般的な業務システムはこういうものです」とゼロから画面設計を押し付けると、現場との間で主観的な議論に陥り、無限の手戻りが発生します。本事例のように、グローバルスタンダードなデザインガイドラインをベースにし、「現場担当者自身に最適なコンポーネントを選択していただく」というプロセスを挟むことで、現場が求める高い操作性と、論理的な合意形成を両立させることが可能です。
Q. 「既存の業務を止められない」という理由から、ITのセオリーから外れた規格外の要求が出た場合の対処法は?
「システムダウンのリスクがあるから無理です」とITの常識を盾に即答で切り捨てるのは簡単ですが、それでは現場のビジネス(利益創出)にブレーキがかかってしまいます。要件を頭ごなしに否定するのではなく、「アプリケーション側の制限は外す代わりに、お客様側の既存インフラの監視体制と連動させて異常を検知する」といったように、別の手段を組み合わせてリスクを相殺する「代替アイデア」を泥臭く検証・提案する姿勢が不可欠です。
Q. 属人化・ブラックボックス化した複雑な業務フローを、齟齬なく要件定義に落とし込むには?
独自の業界文化や複雑なフローに対し、ベンダーがヒアリングして「紙の仕様書を持ち帰って確認する」という従来の手法では、必ず現場との認識がズレます。打ち合わせの場で業務フロー可視化ツールを用い、お客様の目の前でフロー図を「リアルタイムに修正・更新」して全体像を共有した上で、要件に沿ったプロトタイプをスピーディに構築し、実際の画面に触れてもらいながら検証を回す。この「生きた要件定義」こそが、最も手戻りが少なく、確実なアプローチです。

プロジェクトマネージャーからのメッセージ

担当プロジェクトマネージャー プロフィール
大規模なスクラッチ開発からインフラ構築まで、幅広い領域で10年以上のプロジェクトマネジメント経験を持つ。「ITの常識」にとらわれず、未知の業界や独自の企業文化にもフラットに飛び込み、業務フローの本質を紐解くヒアリング力と素早いキャッチアップ力に定評がある。
「全く未経験の業界の、しかも『デザインの最前線』のシステム基盤を作るということで、最初は業界特有の常識や複雑な連携仕様が分からず、何度も壁にぶつかりました。しかし、未経験だからこそ『知ったかぶりをせず、お客様と徹底的に対話する』という強みを発揮できたと思います。ISIのチーム全体で『難しい要求でも、まずは実現可能性を探る(できないと言わない)』というスタンスを徹底しました。
要件定義でのリアルタイムな合意形成や、制限を外す思い切ったインフラ設計など、技術力だけでなく『どうすればお客様のビジネスが一番加速するか』を泥臭く考え抜いたプロジェクトでしたね。結果として、お客様から『作業コストが劇的に減った』『これでデザインに集中できる』というお声をいただいた時は、技術者として最高のやりがいを感じました。これからも、業界の壁を越えて、お客様のビジネスに柔軟に伴走できるパートナーであり続けたいと思います。」

「何から手を付ければいいか分からない」「まだフワッとした構想しかない」「自社独自の複雑な業務フローでもシステム化できるだろうか」といったライトなご相談でも大歓迎です。どんな些細なお悩みでも、自社に最適な形へと落とし込んでくれるアイ・エス・アイソフトウェアーに、ぜひ相談してみてください。