最近、「ノーコード開発」とか「市民開発」という言葉を聞くことが増えてきたな…という方、多いのではないでしょうか?
これは、IT部門に頼らなくても、業務部門の人たちが自分たちの業務に合わせてアプリやシステムをつくる、新しい開発のかたちです。
スピーディーに改善できて便利な反面、「これ、ちゃんと社内でコントロールできてる?」という不安の声もちらほら。
特に情シスの立場からすると、「ありがたいけど、ちょっと怖い」存在でもあります。
今回は、ノーコード開発と市民開発の違いやメリット、気をつけたいポイント、そして情シスがどう関わっていくとよいかについて、
わかりやすくご紹介します。
まずは基本から。
ノーコード開発とは、コードを書かなくてもアプリをつくれる開発手法のこと。
たとえば、ドラッグ&ドロップで画面やボタンを組み立てていくようなイメージです。
代表的なツールには、Power Apps、kintone、Airtableなどがあります。
一方、市民開発(Citizen Development)というのは、「IT部門以外の人がアプリをつくること」を指します。
営業、総務、経理、製造現場……など、業務部門の人が「こんな仕組みがほしい」と思ったときに、
自分たちでつくるという動きです。
という違いがあるんですね。
「現場でシステムがサクッと作れる」って聞くと、すごく便利に聞こえますよね。
その通りなんです。
あらためて、メリットを整理してみましょう。
たとえば、業務改善のアイデアが浮かんだとき、
「ちょっとフォームつくって試してみようかな?」と思ったら、すぐに形にできるのが魅力です。
IT部門に依頼して、見積もって、順番を待って……というプロセスをスキップできます。
全部の業務改善を情シスだけで対応するのは非現実的。
市民開発が定着すれば、現場が自走できる部分は任せるという形になり、
IT部門はより重要なシステムに集中できます。
現場を一番よく知っているのは現場の人たち。
だからこそ、「こうすればもっと楽になるのに」という細かなツボをおさえたツールが作れるんです。
使っていても「自分たちでつくった感」があるので、愛着や運用意識も高まりやすいです。
便利なノーコード&市民開発ですが、「自由にやっていいよ」だけではうまくいきません。
よくある落とし穴もチェックしておきましょう。
現場が独自にツールを導入すると、情シスが把握できない“野良システム”が生まれます。
セキュリティ対策が不十分なまま、機密情報が登録されていることも…。
「◯◯さんがつくったやつだから、あの人にしかわからない」という状態になりやすいです。
担当者が異動・退職したときに、使えなくなってしまうケースもよくあります。
部門ごとにバラバラなルールで作ったシステムが乱立すると、データの整合性が取れなくなったり、
後から全社的なツールと連携しようとしたときに問題が発生したりします。
ここで出番なのが情シス部門です。
市民開発を完全に自由にさせるのではなく、ルールを整えたり、相談窓口を設けたりして
「安心して取り組める環境を整える」ことが求められます。
たとえば、
「 Power Apps や kintone はサポート対象 」
「 個人契約の不明なSaaSはNG 」
といった形で、使用を推奨するツールを明確にしましょう。
これだけでも現場の不安はかなり減ります。
「難しいIT用語だらけの運用設計書」はハードルが高すぎます。
むしろ、
「 保存場所は共通のフォルダにしよう 」
「 名前の付け方は部署+目的で統一しよう 」
くらいのシンプルで実行しやすいルールが効果的です。
月1回の「市民開発お困りごと相談会」や、「このツールどう思います?」と気軽に聞けるチャット窓口があると、
グレーゾーンな相談も早めにキャッチできます。
ノーコード開発や市民開発は、これからの業務改善・社内DXの大きな柱になる取り組みです。
ただし、それが「場当たり的」「バラバラ」になってしまうと、かえって業務を複雑にしてしまうことも。
だからこそ、情シスがうまくリードしながら「使ってよし」「相談してよし」「育ててよし」の文化をつくっていくことが大切です。
ノーコードはツール。
市民開発は文化。
情シスは、それを育てる“土壌”です。