中小企業から大手企業までの多くの企業で、新システムの導入や物品の購入を行う際に、「稟議」を通す必要があると思います。
複数承認者からの承認を経て決裁権者で決裁されないと、手続きが前に進まず、何度も稟議書を書き直す事態が発生したことがあるのではないでしょうか。
毎日の業務に追われる中で、稟議書を何度も書き直す時間がないという方からそもそも稟議書ってどうやって書くのがいいのかがわからない方まで、稟議書の作成に関わる方は本記事を参考にしていただければ幸いです。
各企業ごとに稟議が通りやすい人、なかなか稟議が通らない人がそれぞれいるかと思います。
稟議が通りやすい人にはいくつかの共通点があります。
そこでこの章では、稟議が通りやすい人に共通する特徴を5つご紹介いたします。
すぐに実践できるもの、できないものありますが、意識するだけでも変わってくるので、参考にしてみて下さい。
まず1つ目の特徴は「まとめるのが上手」です。
まとめ上手な人は、「課題」「目的」などのポイントを明確にし、第三者目線で簡潔にまとめます。
手段ばかりの説明になってしまい、目的が見えていないと上手くまとめるのが難しいです。
ダラダラとした文章になってしまっていないか心配な場合は、文章や資料を作成後3日間ほど寝かし、再度読み直してみるか、第三者に読んでもらってみましょう。
2つ目は「結論ファースト」です。
1つ目でお伝えした「話を簡潔にまとめる」と似ている部分がありますが、結論を先に伝えてから裏付けとなる根拠を説明すると、スムーズに聞き手に伝わり説得力が上がります。
結論を伝える方法としては、大きく分けて2つの伝え方があります。
1つは、「今のままだと〇〇な状況に陥ってしまう」という問題提起型です。
もう1つは、「将来こう改善される」という課題改善型です。
たとえば、SFAの導入であれば「SFAで現状把握ができるようになることから、将来売上が上がります」、システムのリプレイスであれば「現システムだと属人化しておりメンテナンスが困難」というように使い分けが必要です。
使い分けについてはかなり難しいものとなりますが、自分が承認者の立場となりどちらの方が伝わるか考えてみましょう。
3つ目は「数字を上手く使う」です。
目標やシステム導入後の効果を言葉で説明するだけでなく、具体的な数字を活用する方が説得力のある内容となります。
たとえば「売上がアップします」と言うより、「2年以内に案件件数10%アップ、売上20%アップします」と提示する方が具体性が増し、説得力アップにつながります。
現在立てている「KPI*」も交えるとシステム導入後の効果がよりわかりやすくなります。
また、円グラフや棒グラフといった視覚的に捉えられるグラフを使うのも説得力アップにつながります。
しかし、グラフを活用する際に気をつけなければならないのが、誤解を招く可能性があることです。
目盛りの間隔が違っているなどするとグラフの見え方は大きく変わります。
グラフは自分の考えを自由自在に表現することができるため、作成・使用の際には誤解を招かない用に気をつけましょう。
*KPIとは、目標達成の度合いを測るための指標のことで、日本語では「重要業績評価指標」と言います。
4つ目は「根回し上手」です。
稟議の内容に併せてあらかじめ関係者や上層部へのヒアリングをしておき、内容にそのヒアリング内容を盛り込むなど、関係者への事前調整を行っておきましょう。
なかなか難しいですが、稟議までに提案・改善をし、稟議では最終合意を取るイメージで進めると良いかもしれません。
5つ目は「実績と信頼がある」です。
上層部から見て「この人はいつもしっかりと業務をこなしているから任せても大丈夫」と信頼されている人は、言うまでもなく、信頼が薄い人に比べて稟議が通りやすいです。
これはすぐに実践できることではないですが、普段の業務から実績と信頼を積み重ねる意識をしましょう。
準備を万全にし、稟議に臨んでもなかなか稟議に通らないこともあるかと思います。
そう言った場合に確認していただきたいポイントがいくつかあります。
本章では、稟議に通らない際に確認したい起案内容を3つご紹介いたします。
まず1つ目は、「情報が十分でないまま稟議にあげる」です。
起案内容に今回の背景や目的が書かれていなければ、なぜ今回そのシステムを導入するのかがわかりません。
目的が書かれていたとしても、詳しくなかったり、現状の課題と解決から少し離れていたりするとなかなか伝わりません。
また、導入を考えているシステムのなるべく詳細な情報が必須です。
2つ目は「システム導入におけるメリットがわからないこと」です。
上層部や承認者に納得をしてもらうためには、システムの導入や運用の際に発生するコストに対して、同等またはそれ以上のメリットがあることを提示する必要があります。
3つ目は「リスクと対策が明示されていないこと」です。
システムの導入にリスクはつきものです。
稟議内容を承認することで、承認者は何か合った場合に責任を追わなければならなくなります。
そのため、事前に考えられるあらゆるリスクとその対処法についてあらかじめ提示する必要があります。
これまで稟議に通りやすい人の特徴や、通らない原因をお伝えしてきましたが、稟議をスムーズに通すにはどうすればいいのでしょうか?
今からでも意識できる稟議内容の準備について、5つご紹介いたします。
重要なポイントが絞られておらず、ダラダラとした文章で書かれた稟議書・報告は聞き手には内容が伝わりません。
こうした文章は大変読みにくく、補足説明を求められたり「意味がさっぱり理解できない」と差し戻されてしまうことがあります。
逆に、内容をまとめすぎた淡白な説明になってしまうのも聞き手に内容が伝わりません。
文章を短くするだけでなく、箇条書きやナンバリングなど、見せ方にも工夫を加え、何を伝えたいのか簡潔にまとめるようにしましょう。
具体的な数字やデータが示されていると、稟議のメリットをより直感的に伝えることができます。
「コストカット可能」よりも、「現在より〇円原価が下がるため、△%のコストカットを実現される」と記載したほうが、読み手も判断をしやすくなります。
稟議内容を実行しても効果が期待できない提案では、承認をもらうことはできません。
導入したときに得られる効果をなるべく詳細に書きましょう。
また、導入にかかるコストを加味し、申請内容を実行すればどのくらいの期間で黒字回収できるかなど、数値を用いて論理的に説明することも効果的です。
承認してほしいからといって、メリットばかり強調しすぎてはいけません。
リスクやデメリットをしっかりと記述することも大切です。
稟議を承認した場合、承認した人が責任を負うことになるため、計画に不備がないかどうかを稟議書でチェックをする必要があります。
そこでリスクの記載が不十分だと、そもそもチェックができません。
良いか良くないかの判断ができないため、承認されづらくなります。
どのようなリスクがあり、どのように対処できるのかという点をはっきり記載するようにしましょう。
リスクへの対処が正しく書かれてあれば、リスクがあったとしても、承認者は安心して承認できるようになります。
今回採用を予定している製品以外にもいくつか検討した製品があるかと思います。
その製品たちとの比較をしっかりと説明すると、相場や課題の解決方法について判断しやすくなります。
金額だけでなく、性能や導入時の必要工数、導入後のメンテナンスやサポートの観点からも説明すると効果的です。
今回は稟議をスムーズに通すために必要なポイントをご紹介いたしました。
難しく稟議といっていますが、簡単に言えば稟議は「上層部へのプレゼン」です。
稟議書がわかりやすくまとまっており、重要な点をしっかりと伝えられれば承認も得やすく、提案した内容が実現されやすくなります。
ぜひ今回ご紹介したポイントを参考に、効率的で通りやすい稟議の内容を目指してみて下さい。