日本の労働生産性(1人当たりGDP)は他国に比べて低いという話を耳にすることが多くなりました。
実際、国連が発表しているデータによると、先進国の中では労働生産性は低い水準となっています。
従業員の頑張りが足りないために生産性が上がらないと思ってはいないでしょうか。
生産性の向上に限界を感じていないでしょうか。
生産性を向上するにはどのような要因が考えられるでしょうか。
生産性には、資本生産性と労働生産性があり、それぞれ
資本(機械・貨物自動車等の設備)1単位に対してどれだけ価値が産めたか
労働力(単位時間当たりの労働投入)1単位に対してどれだけ価値を産めたか
一般的に生産性というと、労働生産性のことを指します。
生産性(労働生産性)は以下のように表せます。
1人で100万円売り上げる生産性は10人で100万円売り上げる場合の10倍になります。
もしこの10人がそれぞれ100万円売り上げれば(生産性を高めれば)売上も10倍になります。
ただし、この計算が成り立つのは生産力に対して需要が十分に大きい場合で、そもそも需要が100万円しかなければ、同じ働きをしたとしても、残る9人分の努力が報われるとは限りません。
戦後から高度成長期までは、物不足で需要が生産力に対して十分大きく、生産性を向上させるには、どれだけ少ない資源(設備、労働力)で付加価値を生産できるかだけを考えていれば十分でした。
これは人口の増加によって、何もしなくても需要が増えてく環境が続いていたためです。
多くの人が無意識に、これまでずっと上手くいっていたやり方を維持しようとしていますが、それは人口が増加する前提の環境においてのみ有効なやり方であったに過ぎません。今のやり方を引きずっていては成功にはたどり着きません。
特に人口減少に伴って需要が減少する傾向にある今後はこれまでの考え方を変え、同じ手持ちの設備や労働力で「生産する付加価値をどれだけ高めることができるか」に考えをシフトしていく方が効果的ではないでしょうか。
もし従業員の質に満足がいっていないのであれば、早急に従業員の訓練をする必要があるかと思いますが、海外との比較において、従業員の高スキル人材比率は十分日本の方が高くなっています。
デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論: 潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋
海外との生産性の差が顕著に現れているサービス業では、せっかくのIT化が有効に働いていないという分析があります。
たとえば、IT化において海外の企業では、新しい技術を前提とした、理想的な業務モデルをまず定義して、その理想形を目標として実際の業務を設計するトップダウンのアプローチを取りますが、国内企業では多くの場合、現状の業務を前提にIT技術を盛り込むボトムアップのアプローチを取ります。
そのため、海外ではITの導入効果を最大化しているところ、国内では旧来のやり方に縛られてITの導入効果が制限されていると考えられます。
海外の企業では、理想的な事業の構造を明確に定義し、従業員との間で共有できているからこそトップダウンのアプローチで理想的な業務を目指すことができるのではないでしょうか。
もし、経営者として現状の資源でもっと多くの付加価値を生み出せるはずだ。と考えるなら、経営者が思っている事業の理想形が、従業員に正しく明確に伝わっていないだけかもしれません。そのために、ずれたターゲットへずれたサービスを提供しようとして、経営者の想定するような生産性が出ていないのかもしれません。
まずは、事業の理想形を明確にしましょう。そして、事業の理想形を従業員と共有し、その上で何がどれくらい理想とずれているのか、現状とのギャップを明確にして、それぞれのギャップを継続的に改善していくべきではないでしょうか。