製造原価とは、製品の製造に必要な材料費・労務費・経費などの費用のことをいいます。
実際に発生した費用を集計したものを実際原価といいますが、これには偶発的な要素が含まれることがあり、時によって高い場合もあれば安い場合もあります。
実際原価が高い場合は、原因を突き止め、無駄を減らして原価を抑えなければなりません。
こうした分析を行うために使用する原価を「標準原価」といいます。
本記事では、標準原価についてご紹介します。
標準原価とは、製品を製造する際の標準的な製造原価とのことです。
過去の実績データや市場調査に基づいて設定し、製造の際の目標値となります。
原価標準とは、製品1単位当たりの標準原価です。
標準直接材料費・標準直接労務費・標準製造間接費から構成されています。
なお、製品ごとに原価標準をまとめたものを標準原価カードといいます。
標準原価カードで各費目について目標値を決めておき、数量を乗算して標準原価を算出することができます。
例)製品Aの前年の実績を参考に原価標準を設定する場合
・製品Aを1個作るのにプラスチックが10kg必要で、プラスチックの価格が1kgあたり250円とすると、標準直接材料費は2500円となります。
・作業者の時給が1000円で、製品Aを1個作るのにかかる時間が0.5時間とすると、標準直接労務費は500円となります。
・工場全体で間接経費が月間10万円かかっていて、製品Aを作る設備は月間8時間、製品Bを作る設備は月間2時間稼働したとします。
設備の稼働時間を基に按分すると、製品Aの月間間接経費は8万円となり、標準間接費配賦率は8万円 ÷ 8時間 = 1万円/時となります。
作業時間は0.5時間であるため製品Aの標準製造間接費は1万円/時 × 0.5時間 = 5000円となります。
これを製造原価カードにまとめると、以下のようになります。
標準直接材料費:250円 × 10kg = 2500円
標準直接労務費:1000円 × 0.5時間 = 500円
標準製造間接費:1万円/時 × 0.5時間 = 5000円
製品1単位当たりの標準原価 = 8000円
なお、原価標準の設定の手順は前述の通りとなりますが、実態に即した標準となるよう適宜改訂する必要があるため、個社ごとに会計士や監査と調整して落としどころを決めていることも多いです。
標準原価と実際原価を比較し、差異が発生した原因を分析します。
標準原価よりも実際原価が高いと、利益がその分減少します。そのため、差異の原因を明らかにすることにより、原価改善に役立てることができます。
材料費で差異が発生している場合は仕入価格や使用量、労務費で差異が発生している場合は作業時間などが分析対象となり、以下のように分けることができます。
価格差異:標準価格と実際価格との差によって発生する差異
(標準価格 - 実際価格)× 実際消費量
数量差異:標準消費量と実際消費量との差によって発生する差異
(標準消費量 - 実際消費量)× 標準価格
賃率差異:標準賃率と実際賃率との差によって発生する差異
(標準賃率 - 実際賃率)× 実際作業時間
作業時間差異:標準作業時間と実際作業時間との差によって発生する差異
(標準作業時間 - 実際作業時間)× 標準賃率
予算差異:予算の無駄遣いや設定に関して発生する差異
操業度差異:作業時間や機械稼働時間などの操業度の無駄を原因として発生する差異
能率差異:作業能率の良否によって発生する差異
差異分析によって明らかになった原因を改善するべく対策を取る必要があります。
例えば、材料費の価格差異が原因であれば、価格交渉を行う、仕入先を変更する、あるいは労務費の作業時間差異が原因であれば、最新機器を導入して作業工数を削減するなど、原因に応じた改善策を策定することが重要です。
標準原価は製造時に目標となる原価です。
あらかじめ決めておいた原価標準で原価計算を行い、実際原価と比較して原価差異を分析することで効果的に原価管理を行うことができるのです。